【論説】天皇陛下の退位を実現する皇室典範特例法案が閣議決定された。昨年8月、陛下が退位のお気持ちをにじませたのを機に政府、与野党で検討を重ねた。政府は2018年中の退位を想定、6月上旬にも成立する。

 今後は国会審議に移るが、あくまで一代限りの特例法案だ。恒久制度化や女性宮家の創設など皇位の安定継承からは程遠い。法案採決時の付帯決議にどのような文言で書き込むのか、与野党の主張には隔たりがある。国民理解が深まるよう議論を尽くし、皇室典範改正へ向かうべきだ。

 天皇は憲法1条にうたう「日本国の象徴であり国民統合の象徴」。地位は「国民の総意」に基づく。その継承は皇室典範で天皇の崩御の際に限られ、生前退位は規定されていない。

 陛下のご高齢による公務遂行の困難性は、両陛下の人柄と平和を願う慰霊の旅や被災地訪問などを思えば、国民も理解し退位の意向に納得したのではないか。問題は退位をどう位置付けるかだった。

 共同通信社の世論調査では恒久制度化に賛同する意見が68%、女性宮家創設に賛成も62%に上る。

 陛下の意向表明では戦前の摂政に関する問題にも触れるなど、一代に限らず将来の皇室の在り方をも展望しながら、総合的な議論を望まれたのではないか。

 だが、安倍政権は当初から「結論ありき」で陛下一代限りの特例法制定の方針を貫いた。「終身在位」と「男系男子による皇位継承」にこだわるのは保守層を意識したものだろう。有識者会議でも議論の道筋が決まっていた。

 菅義偉官房長官は、衆参正副議長が3月にまとめた国会見解の内容を「忠実に反映して立案した」と強調した。特例法案の根拠規定を皇室典範に置いた点などを挙げたが、中身は恒久制度化にこだわった民進党との妥協の産物といえよう。

 国会見解では「退位は例外的措置」としたが、一代限定の特例法制定でも先例になり得ると指摘した。先例となり将来の退位に道を開くのなら、なおさら制度化すべきではないのか。

 今回、政府は女性宮家創設の検討を法整備から意図的に切り離した。これも保守層には女性・女系天皇につながることに対する警戒感が根強いからだ。

 国会審議では「女性宮家」の創設を含む皇位継承の安定化策に関する付帯決議が焦点となる。国会見解でも政府に速やかな検討を促している。明記を目指す民進党に対し、自民党内には慎重論があり、とりわけ安倍晋三首相は否定的だ。

 「皇族数の減少等の諸問題」などとの決議案も水面下で協議されているようだが、その場しのぎでは民意から離れるばかりだ。

 女性宮家の議論に関し、最有力候補と目された秋篠宮家の長女眞子さまの婚約が明らかになった。皇籍を離脱すれば未婚の女性皇族は6人に減り、皇室の先細りは一層深刻化する。小手先論はもう通用しない。長期的な視野に立ち、幅広い根源的な議論を求めたい。

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