受精卵から誕生までの全過程(彫塑)

‘あれ!おかしいな・・・’とおもって気が付いたときには妊娠3ヶ月、あるいは、日頃から生理不順な人やちょっと呑気な人は気が付いたときには4ヶ月以降になって気づいたという話もしばしば耳にするものです。みなさんはそんなことはありませんでしたか? 胎児の成長に関する本はたくさんありますが、ここではミヒャエラ・グレックラー氏の講演録(「―医療と教育を結ぶーシュタイナー教育」講演録・群青社)に基づいてその成長の概要をたどってみたいとおもいます。

グレックラー氏は、ドイツの人智学(シュタイナーの思想に基づく)の女医さんです。日本の医師や医療にかかわる人たちの要請を受けて、その人たちを対象とした集中講座がこれまで5年間にわたって行われてきました。その講座も昨年で一区切りし、ようやく、多くの人の念願かなって今年の夏から一般の教育や治療教育関係にかかわる人を対象とした講座が行われることになったのです。

おや、おかしいな?と早くに妊娠に気づいたとしても妊娠第4週目には胎児の長さは3.5ミリメートルになっていて、頭部組織が急速に成長していて、既に目の形成が始まっているそうです。この時期は1週ごとに大きな変化が見られ繊細な最初の2ヶ月に、すべての器官の機能が確立し始めるのだということです。もし関心がおありの方は、先回ご紹介した本「Ein kind entsteht」(日本語版「誕生の神秘」小学館 絶版)等を図書館などで実際の写真で是非御覧になってください。

この期間は胚芽期と呼ばれ、それ以降、第3月から妊娠末期までの、諸器官が単純に成長する段階は胎生期と呼ばれます。第6週になると四肢のなかで最初に現われる手の成長の様子だけでなく、足が出てくる様子もわかり、ここで人間の原像をみることができるというのです。私たちの肢体系は周縁部から形成されるといわれていますが、発生学的にもそれはただしいいことがわかり、四肢の発達は、手足の指から始まります。

以前サリドマイドの大惨事が起きたとき、3本ないし4本の指が肩についていたのですが、それは、妊娠初期のこの繊細な時期に発達が中断されると、成長のプロセスがその段階で止まってしまったからだそうです。2ヶ月の末、発達の第7週目、ないし8週目になると、胎児は、1.5センチメートルになり、この段階では、手の指、足の指、そして下肢が出始めているのがわかるのです。また頭、耳、目、肝臓、手の下にある心臓がすでによく発達しているのがわかります。赤ちゃんは手を心臓の上に置いているのだそうです。

このように、気づかないうちに、私たちの思いを超えた世界では、ミリ以下の極微小な世界で、時の経過を伴いながら、与えられた条件を、着々と、しかも一部の狂いもなく誕生までの子どもの形態に形成していくのです。

お腹に宿った瞬間が1gの千万分の15、そして誕生を迎え、生まれ出るときの平均体重は、3キログラム。10ヶ月の間に20億倍も体重が増えることになるのです。20年たって一人前になって、平均体重を60キロとしても20倍しか増えていないのです。1年足らずの10ヶ月の間に20億倍も体重が増えるという、この数字をもってしても、いかに、お腹の中でなされることが重大であるかがわかるのではないでしょうか。(浄土宗 藤堂俊章上人・講和より)

しかも、誰も、この形成の作業に子宮の中に手を入れて自分関わることはできません。では、母親の この胎内ではどのような力が働いているのでしょうか。

その力を形成力(生命力)とR・シュタイナーは言っています。生命体は、物体の原・造形家です。この段階では、すべてがゲル状、透明で、まだ明確な形をしていません。このような形はすべて最初は液体状態で生じ、その後第5月、第6月になって初めて急速に明確な形を取り始めるのです。