1年3カ月ぶりに再稼働した関西電力高浜原発4号機=福井県高浜町音海

 「以前の活気が戻ってくる」「避難計画には不安」―。司法判断で止まっていた関西電力高浜原発4号機が17日、1年3カ月ぶりに再稼働し、地元福井県高浜町民からは経済が再び好循環することへの期待の声が聞かれた。しかし実際に原発が稼働し続ける状態に入ったことで、万一の事故を恐れる町内外の住民の胸中には、安全管理や避難計画に対する不安感も交錯している。

 「これで今までの高浜町に戻るだろう」。ガソリンスタンドなどを経営する同町商工会長の田中康隆さん(61)は1年3カ月ぶりの再稼働を歓迎した。今後は定期検査などで流入人口と消費が増えることを見込み「恒常的に経済が活性化する。ようやく先が見通せるようになった」と語った。

 再稼働準備が本格化してから同町内では作業員らが増え始め、既に満室のホテルや旅館もあるという。旅館を営む西出景子さん(68)は「以前の活気が戻ってきたと感じる。商売をする身にとってありがたい」。同じく旅館経営者で若狭高浜観光協会長の大角一馬さん(69)は「原発とは共存共栄。再稼働が活性化につながる」と喜びつつ「絶対に事故がないよう安全に努めてほしい」とくぎを刺した。3人の子どもを持つ三浦洋子さん(46)も「再稼働は地元にとってありがたい。将来の子どもたちのためにも安全第一にしてほしい」と語った。

 一方、再稼働反対デモに参加した「ふるさとを守る高浜・おおいの会」代表の東山幸弘さん(70)は「福島のような重大事故を起こさないために、再稼働させるべきではない。4号機の水漏れや緊急停止、1、2号機のクレーン倒壊など、住民に対する説明が不十分で納得できない」と指摘した。

 同町は全域が原発から30キロ圏内(緊急防護措置区域=UPZ)で、そのうち5キロ圏(予防防護措置区域=PAZ)には町役場も含まれる。人口1万570人のうち5キロ圏内に居住する町民は7割以上を占める。

 原発が見える岸壁で釣りをしていた地元音海区のパート店員大江修一さん(65)は「原発が止まっていても電気はまかなえていた。原発がないに越したことはない」と話す一方、「既にあるものは動いても仕方がない」と複雑な胸中を明かした。同区は原発の奥にあり、陸路で避難するには1本の県道を使うしかなく「原発前を通らなあかんなんて、ばかげている。船やヘリで逃げる以前に、地下シェルターでもないと安心できん」と話した。

 同区の自営業森島一さん(55)は1、2号機の運転延長に反対ながらも3、4号機の再稼働は「ある程度受け入れている」。町が提示するバスでの避難計画には疑問を呈し「国道27号は渋滞が見込まれ現実性がない。地元住民が安心できる避難計画を求める」と語った。

 同町に隣接する京都府舞鶴市の松尾区も5キロ圏内だ。同区の松尾寺住職松尾象空さん(57)は「電気は必要だし舞鶴でも原発で働く人も多い」と再稼働に一定の理解を示しながら「うそでもいい、国や関電から『100パーセント安全』という言葉を聞きたい」とも。「私たちの不安は届いているのだろうか」と語気を強めた。

 中学まで高浜町で育ち舞鶴市内の専門学校に通う山下優香さん(19)は「原発が動かないと仕事が減り困っている人もいたはず」とほっとした表情。故郷で作られた電気が関西を支えているという自負もあり「安全に作業が進むよう見守りたい」と話した。

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