ワインのセミナーなどに参加すると、テーブルにはワイングラスと一緒に口直しの水、最近はペットボトルの小さなミネラル・ウォーターが付けられている事が多いようです。そして必ず大き目の紙コップが並んでいます。これが最も簡単な吐器。ティスティング〔利き酒〕したワインを吐き出す為の物です。

少し前、名古屋で開催されたセミナーでの事。隣のテーブルに座った女性が紙コップにペットボトルのミネラル・ウォーターを注いで飲んでいました。「そうじゃないのに」と思いましたがそのままにしてティスティングへ。私がワインを紙コップに吐き出すと「あっ」という表情をしましたが、後は同じようにしていました。

会社では年に何回か、ワインの仕入れの為に100種類を超えるティスティングをやります。「うらやましい」という声もチラホラ聞こえ、「全部、飲むんですか?」ととんでもない事を言う人もいます。実情はとっても過酷(これはまたの機会に書きます)。全部飲んだらさすがの私も酔いますって…。

もちろん、全てのティスティングは口に行き渡らせたら、吐き出します。長い間、口の中に入れておくとアルコールで味覚が麻痺するので時間は10秒から15秒。この時に使うのは大きめのワイン・クーラー。ステンレスかプラスチックでも中身が見えないよう色が付いたものを使います。ホテルで開催される試飲会も大体、ステンレスで大き目のワイン・クーラーを使用しています。が、本来なら吐き出した中身が見えず、はね返りがないデザインになったスピトーンがあれば良いですね。

そして吐き出し方にも美学が…。やはり本場のヨーロッパの業界人は綺麗ですね。口をすぼめピュッと放物線を描くように吐き出します。お手本はアメリカ人ですけどエリン・マッコイ著「ワインの帝王ロバート・パーカー」の163ページ。仕事部屋で働くパーカー。ほら、美しいでしょ?この吐き出し方。

私も一頃、お風呂場で吐き出し方の練習をしました。ベネシアンドールの練習をお風呂場でしたという人もいましたね。思い出しました。お風呂場って液体関連でいろいろな練習が出来るところですね。

この吐器で思い出す映画は2005年に公開された「サイドウェイ」。ピノ・ノワール人気に火をつけた映画です。小説家をめざす国語教師のダメ男マイルス。中年だし、ロブ・グリエ風の小説では売れる筈もない。ワイン好きの彼は旧友のジャックの結婚祝いを兼ねてワイナリーを巡る一週間の旅に出るロード・ムービー。中年はつらいけど美味しいワインもあるし、たまには良いこともある。ダメ中年マイルスがワイナリーのティスティングで怒り、吐器として使われているワイン・クーラーごとワイン(もちろんワインだけではなく、他人の…)を飲もうとするシーン。オエー。笑えませんでした。

吐器って「はき」と書いてある本もありますね。これって重箱読みですが、どちらが正しいのでしょうか? 嘔吐の「と」ですけど…。オエー。

【しりとりワード!】

ヴィーノ→ノン・ヴィンテージ→淑女のため息→キアンティ→田舎方式→キャヴィア→アペリティフ→ブラインドティスティング→クリスタル→ルビーポート→吐器

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