「若者同士で活発に議論してほしい」と語る益川氏=18日、福井市のユアーズホテルフクイ

 2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英・名古屋大特別教授(77)が18日、福井市内で福井新聞社のインタビューに応じた。同時受賞した福井市名誉市民の故南部陽一郎氏を「日本が生んだ最大の物理学者で、私からみれば湯川(秀樹)、朝永(振一郎)より上」と強調した。後に続く県内の若者に向け「ライバルとの競争心が研究の推進力になる。自由な発想で仲間と議論してほしい」と呼び掛けた。

 益川氏は南部氏の論文に大きな刺激を受け、ノーベル物理学賞の受賞理由「対称性の破れの起源の発見」も南部氏の理論が大本にある。「南部先生はアイデアマンで次々と新しい課題を提起し、私たちに多くの仕事を与えてくれた」としのんだ。

 自然科学分野でノーベル賞を受賞した日本人は計22人。特に01年以降は益川氏、南部氏をはじめ16人を数え、米国に次ぐ多さになっている。ただ、ほとんどは基礎科学に力を入れていた20年以上前の「遺産」が評価されたものだ。

 「日本は戦争に負け、焼け野原になった。国土が狭く、資源もない中で、頭脳で世界と渡り合おうという雰囲気があった」と振り返る益川氏。日本の科学界の現状に対する危機感は強い。

 国の研究資金は短期で利益に結び付く応用研究に集中する傾向。基礎科学を支えてきた大学の予算は年々縮小し、研究費が圧迫されている。特に地方の国立大は国からの交付金が減り、厳しい状況に置かれている。

 「ノーベル賞の受賞者が多いといっても、今の調子がいいという訳ではない。直接もうかる研究ばかり奨励している。素粒子のような目に見えないものに向き合うとき、研究者の自然観が反映される。文学部がいらないというような議論はもってのほかで、もっと総合的にみる必要がある」と警鐘を鳴らした。

 現代の若者に対しても「いいやつばかりだが、内地志向でハングリー精神が足りない。生き馬の目を抜くような世界の競争であくせくするよりも、日本でほどほどの生活を送った方がいいと考えている」と苦言を呈した。

 19日に福井市のアオッサ県民ホールで開かれる「ふくいサイエンスフェスタ」の講演のために来県した。県内の小中学生の学力・体力は全国トップクラス。その素地をさらに伸ばすため「先生や先輩に教えてもらえばすぐに答えが出るが、同世代の議論は話があちこちに飛ぶ。その中から自分の興味や可能性が広がる。夜を徹して議論してほしい」とエールを送った。

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