「きょうだいの会」の催しでニュースポーツの「モルック」を楽しむ参加者=2013年5月、福井市のふくい健康の森

 障害児者のいる家庭では、生活が障害児者を中心に回りがちで、兄弟姉妹が疎外感を感じる場合がある。福井大医学部附属病院の医師らが、福井県内の自閉症児者の家族を対象に、そうした子どもらが悩みを共有したり、多様な経験をしたりする場を提供している。医師は「きょうだいは親よりも長く関わっていく存在。彼らの不安に手を差しのべていくことが必要」と話している。

 この取り組みは、県自閉症協会の活動の一環として「きょうだいの会」と銘打ち2009年にスタートした。同病院小児科講師の川谷正男医師(46)が代表を務め、協会員らがスタッフを務めている。

 川谷医師によると、自閉症児者との関係の中で、親は療育に熱心で濃密な関係を築きやすい一方、兄弟姉妹に対しては関心が薄くなる場合もあり「分け隔てなく接しているつもりでも疎外感や不公平感を感じていることがある」という。また自閉症は「見えにくい障害」といわれる。知的な遅れがないケースは周囲から障害と分かりづらく、幼い兄弟姉妹が症状を理解し、受容するのは容易でない。「友達関係の悩みや将来に対する不安を1人で抱え込んでいることもあり、同じ境遇にいる者同士がつながり、支え合う場が必要」と、川谷医師は訴える。

 きょうだいの会は年4回程度催しを企画。これまで小学生から高校生まで6人が参加してきた。家族と離れて遊園地に出掛けたり、バーベキューをしたりして過ごす。時には川谷医師から「お父さんやお母さんにも言えない悩みはない?」などと語りかけ、相談にも乗る。

 弟が自閉症の福井市の高校3年生(17)は、川谷医師の活動を知った両親に勧められ、小学4年ごろから参加するようになった。「当時は母親が弟に手いっぱいで、甘えたいのに、かまってもらえず『私にお母さんはいない』って泣いたこともあった」と振り返る。会では弟のことを少しだけ忘れて夢中で遊んだ。「みんな同じような悩みを抱えているのでいろんなことが話せて楽だった」と笑顔も見せる。

 母親(46)は「小さいときから遊園地や買い物に連れていってあげられず(娘に)さみしい思いをさせた。難しい思春期のころはとても心配していたが、きょうだいの会で同世代の友達とさまざまな経験ができ、ありがたかった」と感謝する。

 自閉症の兄を持つ越前市の中学3年生(15)は幼いころ、「お兄ちゃんと遊びたいのに、一人が多くて『何で障害があるんだろ』って思ったこともある」。学校の友達や地域の人は兄を受け入れてくれて嫌な思いをしたことは全くないが「学校以外の遊び友達ができて良かった」と話す。

 川谷医師自身、4歳下の弟が知的障害を伴う重度の自閉症だ。長い間「支援されるのは弟で、自分は支援する側」と考えていたが、08年の日本自閉症協会全国大会に参加した際、米国の著名な心理士が「障害者の兄弟姉妹も支援を受けるべきだ」と講演するのを聞き「自分も支援されていいんだ」と心が軽くなったという。

 「兄弟姉妹の悩みの程度や種類は人によってそれぞれ。個々の気持ちに寄り添い、ニーズに応じた支援を続けていきたい」と言う。その上で「両親が亡くなった後のことや(自閉症児者の)就労などいろいろな悩みは出てくるだろうが、会のつながりや経験が生きてくれればうれしい」と話している。きょうだいの会(福井大附属病院小児科)=電話0776(61)3111。

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