亡くなった九州の男性の親族から「あっとベンリ」に届いた感謝の手紙

 高齢化や核家族化が進む中、遺品整理業の市場が広がり、福井県内でも複数の事業者が取り組んでいる。遺品整理を「生活サポートの最終章」と位置付け、生前からご用聞きなどで高齢者と関わりを持とうとする動きがあり、ある業者は「民生委員と民間が連携すれば、高齢者をより支援できる態勢ができる」と指摘する。

  ■家族葬を希望■

 福井市内の70代男性は、末期がんと診断され入院した。設計士だった男性は病院でも設計図を書きたがった。男性は九州生まれで独身。近くに身内はいなかった。

 「なんとかしてあげてほしい」。男性の知り合いの保険業者から、遺品整理など日常のさまざまなサービスを手掛ける「あっとベンリ」(本店福井市)の牧野智樹社長(40)に連絡が入った。牧野社長は病院で男性と面会。男性宅からパソコンなどを運び込み、仕事ができるようにした。

 関わるうちに男性は「オレは車好きでクラウンしか乗ったことがない」「引きこもりの身内に瀬戸内寂聴の本を読ませたい」などと、いろんなことを打ち明けた。そして昨年9月に亡くなった。生前「オレは家族葬がいいな」とも言っていた。

  ■資格者1万人■

 牧野社長は遺品整理士の資格を持つ。2011年に設立された一般社団法人遺品整理士認定協会が認定する民間資格だ。通信講座で法律や実務、遺族に向きあう心構えなどを学んだ。

 社会構造の変化に伴い、遺品整理業の需要は高まっている。資格認定者は約1万人、同協会の登録事業者は福井県の5団体を含む565事業者(昨年12月現在)に上る。

 ただ遺品整理に関する法律はなく、悪徳業者の存在を指摘する声もある。高額請求したり、新聞のおくやみ欄をチェックし、四十九日法要が終わったころに遺品整理のダイレクトメールを送り付けたりする業者もいるという。

  ■生活サポート■

 あっとベンリは現在、福井、鯖江市で5店舗を展開。牧野社長は「遺品整理はあくまで生活サポート。庭の草むしりや屋根の雪下ろし、定期的な家の掃除など、ご用聞きとして生前から高齢者と関わり続け、最後に遺品整理ができれば」と話す。今年中には本店横に高齢者が集えるカフェをオープンする予定だ。

 男性の死の直後に福井を訪れた九州の親族に、牧野社長は生前の男性の様子を伝えた。親族は男性の思いをくみ、あげるつもりがなかった葬式を福井であげた。後日、親族から届いた手紙には「御面倒なこともひき受けてくださり、ありがとうございました」とつづられていた。

 同社の遺品整理は年間10件ほどで、県外に住む息子や娘からの依頼がほとんど。色あせた写真など、さまざまな遺品からは、孤独死に至った故人の人生も見えてくる。浴室で亡くなっていた祖母の死が、遺品整理業を始めたきっかけという牧野社長は「地域の民生委員とわれわれ民間が連携すれば、もっと高齢者をフォローできる」と話す。

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