「貧困は社会全体で改善すべきだ」と訴える藤田孝典さん=2016年12月、東京都内

 高齢者の貧困を取り上げた「下流老人」の著者で、生活困窮者の相談業務を担うNPO法人の代表でもある社会福祉士の藤田孝典さん(34)=さいたま市=に、高齢者の現状や貧困対策について聞いた。藤田さんは「貧困は社会全体で改善すべき問題」と指摘した。

 —貧困の高齢者は増えているのか。

 「年間500件ほど相談を受けるが、近年は現役時代に上場企業のサラリーマンや公務員だった人からの相談が増えた。普通の高齢者なのに、病気になったり介護が必要になったりすると、生活が立ち行かなくなってしまうケースが多い」

 —なぜ、高齢者世帯の貧困は多いのか。

 「もともと年金制度は、1人暮らしや夫婦世帯を想定していない。現役世代の息子や娘の収入の一部を補てんする役割であり、生活全てを支えるようにはできていない」

 —高齢者の貧困は若者世代にも影響があるのか。

 「生活保護の利用資格がある人のうち、実際の利用者の割合は15〜30%という見方があり、現状では生活保護の制度は十分に機能しているとは言えない。結局、子どもの世帯が助けざるを得なくなり家計がもたなくなる。全世代の消費活動が停滞し、経済は悪循環に陥る」

 —なぜ生活保護は機能しないのか。

 「生活保護を受けるには申請しないといけないが、そもそもこの制度をどれだけの人が知っているのだろうか。支援施策の申請主義について、行政は『利用したくない権利への配慮』というが詭弁だ。『この所得以下の人は相談に来てください』といった通知を出すなど、周知徹底する必要がある」

 「日本はとことん困らないと生活保護は受けられない。欧州では住宅手当とか医療の無償化とか、段階に応じて支給されるため受けやすい」

 —著書では、介護保険のように生活保護の保険化を提言している。

 「あれは邪道な提案。公的扶助はみんなの助け合いだから、保険ではないのが当たり前。しかし異常なほどに日本では生活保護が機能していないので、あえて踏み込んで提案してみた」

 —貧困の当事者は声を上げにくい現状がある。

 「根強い自己責任論が影響している。これまでは企業や家族が貧困を支えることができたため社会問題化しなかった。しかし今は企業も家族も余裕がない。貧困は社会全体で改善すべきという考えを広める必要がある」

 —社会保障の充実は増税につながる。国民の賛同は得られるか。

 「税金に対する国民の受益感が乏しいから反対する。これまで税金は、生活に必要なことに使われてこなかった。土木、建設、銀行、不動産など業界団体のために使われてきたということだろう」

 —下流化の防止策は。

 「お金のことはどうにもならないので、横のつながりを持つことだ。自治会や老人クラブ活動に参加したり、老人福祉センターに顔を出したりして、助け合える関係を築くことが大切になる」

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