巣のほぼ真下で見つかった割れた卵=28日午前8時10分ごろ、福井県越前市菖蒲谷町(県提供)

 福井県は28日、越前市白山地区に滞在している国の特別天然記念物コウノトリペア(雄3歳、雌5歳)の産卵を確認したと発表した。県内で野外コウノトリの産卵は1966年の小浜市以来51年ぶり。

 同日午前6時40分ごろ、県鳥獣保護管理員が、巣内の卵をくわえる雄を確認した。同8時すぎには、県の飼育員が巣の下で割れた卵を発見。25、26日に続き3個目で、ほぼ同じ場所で見つかったことから県自然環境課は、いずれもこのペアの卵とみている。

 越前市白山・坂口地区の住民らでつくる「水辺と生き物を守る農家と市民の会」の恒本明勇会長(70)は「自然再生に取り組んできた成果。2羽がペアになったとはっきりし、定着が期待できる」と喜ぶ。一方、「(卵が割れ)ひな誕生までの多くのリスクをクリアするのは難しいと実感した。道のりはまだ遠い」と気を引き締めた。

 長年、コウノトリの保護に当たった日本鳥類保護連盟顧問の林武雄さん(84)=同市粟田部町=は「産卵につながりうれしいの一言。周辺に十分な餌があれば今後も繁殖が期待できる。ひなを育てた経験のないペアだから長い目で見守りたい」と感慨深げだった。

 ただ、兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(同県豊岡市)が放鳥を始めた2005年以降、野外での産卵確認はこれまで3府県しかなく、自然界での繁殖は容易ではない。同ペアの卵はいずれも巣外で割れた状態で見つかった。郷公園によると、飼育下の個体では親鳥が自ら産んだ卵を巣の外に捨てる行動が確認されているが、野外個体に同様の行動がみられるかは分かっていない。

 国の特別天然記念物であるコウノトリやその卵の扱いには、文化財保護法や種の保存法に基づく文化庁や環境省との協議が必要で、自由に保護することはできない。

 福井県自然環境課は「今後も産卵が期待できるので、まずは見守ることが重要」との立場。郷公園の広報担当者も「(卵を守る)対策のために人が巣に近づくことが個体にストレスを与え、ペアを解消する可能性も考えられる。まずはペアを維持することが最優先」と語った。

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