西田公昭さん

 振り込め詐欺や架空の投資話、訪問販売など悪徳業者による被害が後を絶たない。さまざまな手口が連日のように報道される中、「なぜ、だまされるのか」と感じる人もいるだろう。「自分だけは大丈夫」と思っているかもしれない。しかし、人は誰でも簡単にだまされることを自覚すべきだ。

 人は「自分の身の回りは安全で、多くの人はいい人である」と信じたがる生き物だ。こうした特性を心理学の用語で「正常性バイアス」と呼ぶ。何でもかんでも疑うと生きづらいし、疲れる。信じることは生物学的な「省エネ」と言える。ただ、お金にまつわる話になった時は一度、立ち止まり、警戒モードに切り替えてほしい。

 犯人グループは、人の信じやすさを逆手にとって「特別に当たった」「残りわずか」といった希少性を強調したり、「著名人が使っている」などと権威を持ち出したりして付け込んでくる。無理な要求をして不安をあおった後、妥協案を提示して揺さぶりを掛け、理性的な判断ができない状態にする。だましのトリックは心理学の原理に合致するもので、知識があっても対抗するのは容易ではない。

 こうした、だましの手口に気付くためには、日ごろからの訓練が必要だ。例えばスーパーマーケットやインターネットで買い物する時に「特別価格」「売り上げランキング1位」といった言葉を見たら、「ヒヤリハット」すべき怪しいサインではないかという意識を持つことだ。即断即決しないことも大切。自分に自信がある人ほど急いで決めがちだが、自身の力を過信せず、周りの人に相談するよう心掛けたい。

 福井に限らず地方都市は今後ますます高齢者のみの世帯が増え、地域のつながりも希薄になるだろう。詐欺被害に遭わないよう一人一人が注意するのはもちろん、社会全体で被害を減らすための仕組みづくりが一層求められる。

 例えば、テレビ電話の普及に本腰を入れて取り組んでもよいのでないか。顔が相手に分かれば、電話による詐欺はある程度減らせるだろう。また、各自治体や職場での防災訓練は一般的に行われているが、詐欺対策訓練は十分といえない。怪しい電話がかかってきた時などを想定し、対応を体に覚え込ませておけば、いざというときにパニックにならずに済む。

 西田 公昭(にしだ・きみあき) 1960年、徳島県出身。立正大心理学部対人・社会心理学科教授。詐欺、悪徳商法の実例を基に、人間の信じる心のプロセスを研究。著書に「だましの手口」など。日本脱カルト協会理事なども務める。

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 詐欺・悪徳商法を研究する社会心理学者の西田公昭さんに福井へのメッセージや専門的な立場からのアドバイスを聞いた。

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