電子マネーが利用できることをPRする店頭ボード。「お客さまの利便性のため」と端末の導入を決めた=福井市経田1丁目の中西昆布

 現金を使わず、電子マネーやクレジットカードで買い物や飲食ができる「キャッシュレス決済」が福井県内で広がっている。来年秋の福井国体、2023年春の北陸新幹線県内延伸を好機ととらえる店舗や事業者は決済端末の導入に積極的で、自治体も支援に乗り出す。利便性向上による消費機会の拡大は、地元経済の好循環につながることが期待される。電子マネーを地域一体となって“育てる”取り組みを追った。

 ■お客さまのため

 電子マネーでお買い物—。老舗の中西昆布(福井市経田1丁目)の店頭には、2月から導入した電子マネーをPRするボードが立つ。中西伸治社長の高校生の長女沙綺さんが手作りしたものだ。中西社長は「買い物で賢くポイントをためたいというニーズが増えている。お客さまのため」と狙いを話す。

 電子マネーは30〜40代の主婦層を中心に利用されているが、まだ1割程度で認知度アップが課題という。新幹線延伸などを見据え「福井駅周辺から郊外店に電子マネーの波がやってくる。お得さと利便性という付加価値を提供することで消費が刺激される。地域経済の盛り上げにつながるのでは」と効果に期待する。

 県内で文具店3店舗を展開するホリタ(本社福井市大願寺3丁目)も今年に入り電子マネーを取り入れた。「支払い方法をお客さまが選ぶ時代。取り残されるわけにはいかない」。堀田敏史社長にはこんな危機感があった。

 都市部では交通系の電子マネーが浸透している。県内では来年夏に「ICOCA(イコカ)」がJR北陸線県内区間に導入予定で、堀田社長は「一気に電子マネーの利用者が増え、日常の生活シーンで当たり前になる」。裾野の広がりに対し、地元に密着する文房具店として商品のラインアップはもちろん、時流に乗った支払い方法の選択肢を広げることは「必然の流れだった」と話した。

 ■普及の鍵は

 県内の事業者は来るキャッシュレス社会にどう備えるべきか。JR福井駅西口商店街の福井アーバンカード事業協同組合は、電子マネーを30店舗余りで導入した。大森伸夫理事長は集客や客単価アップへの期待に加え、「国体、新幹線が迫っている。県都の顔としての最低限のインフラ。地元はもちろん、県外客のおもてなしになる」と話す。

 電子マネーの普及に向けて、同県坂井市丸岡町のそば店「大宮亭」の本谷充社長は「手数料の負担はあるが、お客さま目線に立ち、大切なサービスの一環だと考えを転換できるかが鍵」と説明する。「電車やバス、自動販売機…。どこでも使えないと値打ちが出ない。使える場所があるから使うもの」と指摘した上で、各種業界の組合組織などで十分に電子決済の将来性について議論し、環境整備を推進すべきだとする。「地域の中核的な事業者が率先することで広がりが生まれるだろう。使える場所が増えれば消費が拡大し、地域経済にとってプラスに動く」と話した。

 ■県民参加型

 医療機関でも電子マネーに対応する動きが出てきた。同県敦賀市の泉ケ丘病院はクレジットに加えて、電子マネーの端末を新たに設置した。外来や入院患者への利便性に加え、県が「ふるさと県民カード」に認定した地域密着型の電子マネー「JURACA(ジュラカ)」の取り組みに賛同した側面も大きい。

 県民カードは決済額の0・05%相当分が県の地方創生関連事業に寄付される枠組みだ。同病院を運営する保仁会の神谷敬一郎副理事長は「敦賀は原発問題などで元気がないように思う。医療業界では医師や看護師不足の問題もある。県民参加型の寄付スキームが、U・Iターンの促進をはじめ、人口減少対策などの地方創生に少しでも役立ってほしい」と述べた。

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