メールのやりとりに振り回されては本末転倒です

 「今日は1日メールの返信で終わった」「メールのせいで仕事がまったく予定どおり進まない」……。世の中では生産性や効率化が叫ばれているのに、毎日のメールのために、思うように動けなくなっている、という方もいるのではないでしょうか。

 『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』を出版した、元グーグル人事担当者のピョートル・フェリークス・グジバチさんは、グーグルで働く人は、私たちが思っているように、メールに振り回されることはないといいます。その秘訣をお話しいただきました。

 みなさんが日頃使っているツールの中で、グーグルでは、意外と使われていないものがあります。何だと思いますか?

 実は、それは、メールなのです。

 「毎日使っているし、メールは欠かせない」

 「メールがないと、仕事にならないよ」

 と言う人もいると思いますが、一方、こんな不満もあるのではないでしょうか?

 「一日中メールの処理に追われて、自分の仕事が何もできなかった」

 「メールのやりとりに忙殺される」  

 これでは本末転倒ではないでしょうか?

 グーグルで働く人たちは、そのあたりが非常に上手です。さまざまなツールを使い分けて、煩雑なやりとりを減らしてしまいます。

 具体的にどんなことをしているのか、ご紹介しましょう。

 ■全員で同時に作業すれば10分の1の時間で終わる

 ミーティング後、誰かに「今回の内容をまとめておいて」と頼んだり、打ち合わせをした内容をもとに「企画書」「報告書」をつくることもあると思います。

 当然、打ち合わせをした後、自席に戻って作業をする必要が出てきます。

 さらに、できあがった報告書の内容を何人かで確認するとなると、それぞれの待ち時間もあって、なかなか仕事が終わりません。

 グーグルでは、こんな仕事は「その場で1回」で終えてしまうのです。

 グーグルのオフィスには、ミーティング用の部屋に必ず大きなスクリーンが設置してあります。

 議事録をとるのも、資料を作成するのも、誰かがひとりでパソコンに向かって書き込むのではなく、クラウド上のグーグルドキュメントに全員が同時に書き込めば、その場でほとんどできます。

 このやり方は、ミーティングに限らず、プロジェクトを進めるときにも有効です。よくあるのは、誰かがワードやパワーポイントで文書を作成した後、メールに添付して送信し、それを見た人が必要なコメントを書き込んで返信するというやりとりです。同じ名前で保存してしまうと、誰がチェックしたバージョンかわからなくなってしまうので、「バージョン1」「バージョン2」のように数字を入れたり、「日付」や「チェックした人の名前」を入れて保存し直したりするわけです。

 しかし、いちいち名前を変えるのは面倒で、間違いが起きやすいし、ムダな時間が発生します。

 

 グーグルの場合は、ファイルを添付してメールで送るという方法はとりません。メールで、「資料をアップしたので、必要があればいつまでに修正してください」と、グーグルドキュメントのリンクを添えて関係者に流しておけば、各々が各自で考えて修正を入れてくれます。そして、締め切りがきたらそこで終了です。この方法だと、すぐに完成させたい場合は、チャット機能や、ビデオ会議のできるグーグルハングアウトなどでお互いに話しながら、すぐその場で完成させてしまいます。

 つねに最新バージョンを全員で共有できるので、文書のバージョン管理からも解放されます。

 編集してメールで送ってまた編集して、というのでは、時間のロスが多すぎる。メールのやりとりではなく、その場のやりとりで仕事を完成させてしまうのです。

 これを利用すると、進捗管理などもわざわざ人を集めてやる必要がありません。全員が共有ファイルにアップして、それを確認すればよいだけです。そもそも順調なら報告しませんし順調でなかったら相談します。それだけのことではないでしょうか?

 なお、グーグルのことばかりだと宣伝のようなので付け加えると、マイクロソフトの「Office 365」や、アップルの「iCloud」もクラウド上でファイルが共有できます。

 ■日程調整にメールを使ってはいけない

 メールのやりとりのうち、かなりの割合を占めるのは、日程調整です。そしてこれが意外と面倒な仕事でもあります。全員にメールを送っても、都合が合わない人がいると、また再度仕切り直して日程調整のメールを送る。みんながすぐに送り返してくれるわけではないですし、招集する側にとっては一苦労になります。

 この仕事、こんなに時間も手間もストレスもかけて行うべきものなのでしょうか?

 もちろん、なんの成果もあげない仕事に、時間を使ってはいけません。

 そんなムダを避けるためには、日程調整にクラウドサービスを使うことです。

 たとえば、グーグルカレンダーを必要な人と共有して、会議などの予定をどんどん入れてもらいます。そして、自分のカレンダーを開いてみると、いつのまにかミーティングの予定が入力されていて、クリックすると参加メンバーと会議のアジェンダが確認できる。さらに事前配布資料もアップされている。そこまで準備ができていれば、ミーティングの当日はいきなり本題に入って議論を深めることができます。

 部下との面談も、空いている時間に勝手にどんどん入れてもらえば、調整のためのやりとりが不要になります。

 このやり方は、特に管理職の方はぜひ実践していただきたいと思います。上司の承認を得られればすぐにスタートができるのに、タイミングが合わずに時間だけが過ぎていくこともあります。カレンダーを共有しておけば、部下もその時間に合わせて、声をかけたり相談しにいくことができますので、全体のスピード感が上がります。

 「今日、大丈夫ですか?」「いつなら空いていますか?」と、部下が頻繁に聞くようなら、上司のあなたが部下の時間を奪っているともいえます。

 なお、グーグルカレンダーは共有範囲をグループごとに選べるので、プライベートの予定も必要な人と共有することができます。社内システムとは別に個人のプライベートなスケジュールを管理するのは意外と面倒なので、すべてひとつのカレンダーにまとめておいて、共有範囲だけをグループごとに使い分ければ、ダブルブッキングなどのミスも防ぐことができます。

 ■直接会うほうが何倍も速い!

 メールではうまく意思の疎通ができず、かえって仕事が遅くなることもあります。

 実はグーグルは、小さなミーティングが意外と多い会社なのです(IT系企業だからすべてメールで行うのだろうと思っていた方は、驚かれるかもしれません)。

 それもあって、社内に共同スペースはもちろん、テーブルやカフェテリアなど、一緒に座って会話できるスペースが多いのです。

 そしてグーグルのミーティングは、かなり効率的です。「今、この問題を決定するために誰が必要か」を押さえたら、「今ちょっといい?」とそれぞれに伝えて、その場で4〜5人ですぐ集まって、パパッと終わらせます。

 会議というと、参加者のスケジュールを調整して会議招集のメールを出す、という企業が多いようですが、それだと時間も手間もかかります。でも、「今ちょっといい?」と言われれば、意外とすぐに集まってもらえるものなのです。

 ■メールは持ち帰り文化、チャットはリアルタイム文化

 こうして考えると、メールは意外と「面倒」を増やしているのです。

 この違いは、メールとチャットの違いをイメージするとわかりやすいと思います。

 メールはまず送り手が文章をまとめ、受け手がそれに返事をすることでやりとりが成り立ちます。 1往復するだけで1日、場合によっては数日待たなければいけません。

 しかも、1回のやりとりだけで問題が解決しない場合、結論が出るまでに1週間以上かかることも珍しくありません。こうした、ひとりの人が数日かけて作業を終えてから次の人にバトンタッチし、次の人がまた数日かけて自分の分の作業を終えてから、さらに次の人にバトンタッチするという従来の仕事のしかたは、よく考えてみると、非常に非効率なことがわかります。次の人がすぐにその仕事にとりかかれるわけではなく、バトンタッチするたびに、待機時間が発生するからです。

 それだけではありません。もし、この一連の仕事の中で誰かの仕事のクオリティが低くて、やり直しを命じられたとすると、それ以降のすべての予定が後ろにズレます。こんなやり方では、どうがんばっても、スピーディに成果物を生み出すことはできません。

 一方、メンバーが一堂に会するオンラインチャットなら、対話をしながら意見を集約して、その場で結論を出すことができます。バラバラに作業をしていると何日もかかることでも、時間を決めて関係者全員が集まれば、一気に結論まで出せるのです。

 しかも、今は「オンライン」でいつでもどこでもつながれるので、物理的に1カ所に集まる必要はありません。時差の問題はありますが、日本と米国とインドで同時にプロジェクトを進めることもできます。

 僕のビジネスパートナーである経営コンサルタントの方は、顧客との打ち合わせ中にLINEを使って、今考えている仮説などをいろいろな人たちに確認しています。また、その方はいくつものベンチャーの立ち上げにかかわり、資金調達のサポートもしていますが、投資家たちとLINEを使ってリアルタイムでコミュニケーションをとっています。最近担当したある案件では、メールよりもLINEでコミュニケーションをした人たちのほうが速く投資できたそうです。

 メールというのは、持ち帰り文化です。いったん持ち帰って検討してから返事をする。でも、チャットというのはリアルタイムコミュニケーションです。その場で全部解決します。このスピード感の違いが、仕事の面で生きてきます。

 みんなで集まって一気に解決まで導くというのは、10倍の成果を出す、10分の1の時間で成果を出すなど、現状を劇的に変えるためのやり方のひとつです。仕事の仕方も根本から見直すことができるのです。(ピョートル・フェリークス・グジバチ :元グーグル人事担当者)

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