漁師が用いた風位について研究し、本を出版した青木捨夫さん=3月、福井市内

 福井市の元教員青木捨夫さん(92)が約40年前に執筆した「越廼の風位考」の復刻版を出版した。科学が発達していない時代に雲や風を読んで、漁への影響を予測した「漁師の勘」とも言える風位の考え方を丁寧に記録した貴重な資料となっている。青木さんは「死と隣り合わせだった漁師が生み出した風の呼び名は地域に根付いた貴重な遺産」と話す。

 「越廼の風位考」は、青木さんが福井県越廼村(現福井市)の越廼中教員だった1976年に執筆し、ガリ版刷りで製作した。知り合いの編集者や妻の幸さん(85)の協力で、ことし1月に活字本として出版した。

 地元漁師への聞き取りを基に、東西南北で34通りの使い分けがあった風の名前や意味合いなどを記録した。越廼村では一般的に北を下、南を上と呼び、北から吹く風を下風、南から吹く風を上風と呼んだなどと考察している。

 同じ北寄りの風でも呼び名は多岐にわたる。秋から冬にかけて吹く北西風は「タバカゼ」と呼ばれ、大時化をもたらすと恐れられたなどと説明。「うそをつくという意味の『たばかる』からきている」と、語源も伝えていて興味深い。

 出版を後押しした幸さんは「嫁に来た当時、漁師さんの天気予測があまりにも的中するから驚いた。経験に裏打ちされた知恵をより多くの人に知ってもらいたかった」と話す。青木さんも「運動会と遠足の日程については漁師に聞くのが最も確かだったな」と振り返る。

 青木さんはこれまでに、地区のお年寄りが語った伝説や民話をまとめた本などを出版しており、今回は第4弾。「科学が発達した今でも、漁師の気象判断が非科学的だったとは言い切れない。漁師がどう海と向き合ってきたかを知ってもらえればうれしい」と話している。

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