越前和紙の手すき職人で人間国宝の岩野市兵衛さん(右)を取材する川島小鳥さん=3月15日、福井県越前市大滝町

 5市1町でつくる福井坂井奥越広域観光圏推進協議会の支援を受け、今秋に日台で発刊される日本カルチャー雑誌「秋刀魚(さんま)」の福井特集号の撮影を担当するのは、写真家の川島小鳥さん(36)=東京。販売12万部超の代表作「未来ちゃん」はうち約2万部が台湾に輸出され、どこか懐かしさを感じさせる少女の写真が日本文化に敏感な人たちの心をつかんだ。福井のさまざまな素材にカメラを向けた川島さんは「人のぬくもりを感じられる暮らしがあった。きっと台湾の人たちも感動する」と振り返る。

 2011年に未来ちゃんの写真展が台北市で開かれ、初めて台湾に行った。優しく情熱があって、疲れたら無理をしない現地の人たちの笑顔がとても魅力的で、次の作品となる「明星」を台湾で撮影するために3年で30回通った。多くの人と出会ううちに、自分は台湾の人と好きなものの感覚が近いと気付いた。

 台湾からの旅行者はよく日本を知っていて、東京や大阪から地方に足を延ばす人も増えている。福井には昭和の雰囲気が残る食堂とか、観光地ではないけど、のんびりとしたレトロな場所が多く残っていた。

 丹南地域の伝統工芸も魅力的。越前和紙の手すき職人で人間国宝の岩野市兵衛さん(83)は高齢なのに若々しさがあって、ものづくりに真剣だった。台湾の若者は手作りのものが大好きで、それは効率優先の今の社会に違和感を抱いていることの表れだろう。伝統工芸は効率的ではないかもしれないけど、ひたむきな日本の職人の美しさ、価値観に触れたい人は日本以上にいるはず。

 私は旅行に行くとき、観光地は別に目指していない。いつもと違う時間があって、普段の気持ちを切り替えられることのほうがメイン。福井での取材期間中は福井市東郷地区の最勝寺に泊めてもらって、地域の人たちと一緒にご飯を食べて、とても温かい気持ちになれた。今後、台湾から福井に来る人たちを一般の家庭で受け入れるような流れをつくれると、福井の良さを生かせるのではないか。

 都会は何でも均一化されていて冷たい感じがするが、福井の特集号では今の生活に息づいているもの、温かい人の暮らしを表現したいと思っている。


 【ひと口メモ】身近にあふれる日本の流行

 台湾には日本の漫画やドラマ、音楽といった文化が広く浸透している。日本の流行を敏感に取り入れる若者は「哈日族(ハーリーズー)」と呼ばれ、大学で学ばれる外国語は英語の次に日本語が人気。2015年度の世論調査では、56%が「最も好きな国」に日本を挙げた。

 台湾の駐日代表部に当たる台北駐日経済文化代表処によると、台湾のテレビ放送には日本の番組の専門チャンネルが三つある。さまざまなジャンルのヒット番組を、台湾の会社が買い取って字幕付きで放映。日々発信される「日本の今」を、幅広い年齢層が身近に感じている。

 「まちを歩けば、日本のものはほぼ何でもそろう」と県国際経済課の担当者。回転ずしやレストランなど日本の外食チェーンが進出し、コンビニの商品群は日本とほぼ同じ。日本のファッション誌の翻訳版が販売され、アパレル店に並んだ日本なじみのブランドが、台湾人女性の注目を集めている。

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