「福井らしいライフスタイルには台湾人を引きつける魅力がある」と語る田中佑典さん=福井市

 台湾の日本通に人気のカルチャー雑誌「秋刀魚(さんま)」の福井特集号は、中国語に日本語訳を付けて今秋に日台で発刊される。日本語訳は、福井と台湾の橋渡し役となった福井市出身のプロデューサー田中佑典(ゆうすけ)さん(30)=東京=のこだわり。その理由について、田中さんは「特集号は台湾の人以上に福井の人に読んでもらいたい。海外の編集者が認めた福井の魅力を知ることは、自分たちのまちに対する自信につながるはず」と語る。

    ×    ×    ×

 日大芸術学部在学中の2009年に初めて台湾に旅行した。日本とアジア諸国の文化が混じり合ったようなまちが心地よく、そこから両者の共通点に注目した雑誌編集やイベントを企画する仕事を始めた。

 台湾人の価値観、トレンドのスピード感は日本と同じ。東日本大震災以降、日本の若者はモノを消費することよりも、人のぬくもりを感じるコトに価値を見いだそうとしているように感じているが、台湾の若者も同じ。彼らはぜいたくを求めているわけではなくて、自分らしいライフスタイルにお金を使う。だから、素朴だけど豊かな福井の生活は絶対にコンテンツになる。

 ただ、その良さを理解するには時間がかかるので、特集号では福井に2週間程度滞在する新しい旅のスタイル「微住(びじゅう)」を提案する。取材として編集部のメンバーと一緒に微住を実践したが、台湾の若者でもある彼らが興味を示したのは、福井駅前の古い純喫茶や家族連れでにぎわうラーメン店やスーパー銭湯など。福井人の普段の生活を共有することに価値を感じていた。

 台湾は昨年5月に独立志向の民主進歩党に政権交代した。中台関係の冷え込みから中国マネーの流入が止まって不景気となり、優秀な人材の海外流出が始まっている。台湾には危機だが、日本には好機ともいえる。東京五輪も控えて国際的な人材は、地方の企業、行政、まちづくりにもますます必要。台湾に福井微住が浸透すれば、旅行どころか移住先にもなり得る。福井と台湾の人材が協力し、より豊かな福井のまち、文化が育つことを夢見ている。

 【ひと口メモ】県レベルで経済交流

 日本と台湾は正式な国交はないが、民間主体の経済交流が活発に重ねられてきた。福井県では、県経団連と県商工会議所連合会が2012年、台湾の経済団体と業務協力の覚書を締結。県レベルの経済交流のきっかけとなり、県内製造業を対象にしたビジネス商談会が毎年開かれている。現在は、県内12企業が工場や営業所など計13の拠点を現地に構えている。

 県がまとめた14年の貿易統計によると、県内企業の台湾への輸出額は69億9900万円(国・地域別9位)、台湾からの輸入額は18億5千万円(同13位)で、いずれも増加傾向にある。県も近年、食品や工芸品の輸出拡大を目指す商談会、高級スーパーでの物産展を開いている。

 自治体間では、美浜町が1988年に新北市石門区と姉妹都市提携し、外国人誘客や中学生の訪問事業で相互に協力。福井大や県立大は、台湾の大学と提携して学術交流している。

関連記事
あわせて読みたい