自宅で育てたヤマメの放流を準備する松永一徳さん=2日、福井市国見町

 福井市国見町の三本木川にかつての美しさを−。同区に住む松永一徳さん(80)が、ヤマメなどを自宅で育て、稚魚を川に放流し続けて10年目を迎えた。男性の地道な活動は住民の意識を変え、川のごみが減ったほか、大きく育ったヤマメが見られるようになり、地域から喜びの声が上がっている。松永さんは「魚が戻ってうれしく思う。できる限り続けたい」と笑顔を見せた。

 三本木川は同市国見町を約5キロにわたり流れる、川幅3メートルほどの河川。松永さんが中心となり、同町自治会は2008年から三本木川にヤマメなどの魚の稚魚を放流している。今月2日には住民約10人が、体長3センチほどのヤマメ約2千匹を放流した。3年で40センチほどにも成長するという。

 松永さんによると、約30年前に行われたコンクリート護岸工事などの影響で一時、魚が姿を消した。放流を始めてからは大きく育ったヤマメが見られるほか、産卵のために海から川を遡上してサクラマスとして戻ってくるものも、数は少ないが見られるようになったという。ヤマメが生息するには水質が良く、水中生物が豊富にいることが条件とされ、三本木川が環境を取り戻した証拠といえる。

 松永さんは自宅に設置した3メートル四方のいけすで、約300匹のヤマメを飼育し、毎年卵をふ化させている。農業用水路から自宅に水を引くためのホースを取り付けた際は、工事費約300万円を費やした。消毒薬を使わずに育てると、稚魚の約3割が毎年死んでしまうといい、苦労は尽きないが「子どもだった自分が川遊びしていた時のように、美しい川を取り戻したい」との思いで続けてきた。

 辻岡公雄・自治会長は「放流を始めて川に対する地元の意識が変わった。地域で川を大切にしようという思いが育っている」と話している。

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