「売地」の看板が並ぶ名泉郷ニュータウン=福井県あわら市

 高度経済成長期、郊外で造成された大規模な住宅団地いわゆる「ニュータウン」が、福井県内で岐路に立っている。開発から半世紀がたとうとしているが、入居が進まず荒れ地と化していたり、一時期に一斉に入居したため高齢化が急速に進んだりするなど、地域の存続に住民は不安を抱えている。

 ■8割が「空き地」

 あわら市の金津インターチェンジ近くにある「名泉郷ニュータウン」。約1600区画のうち、家が建つのはわずか約220区画だ。雑草が茂った空き地が多く、家は数区画おきに点在するのみ。「売り地」と書かれた看板も並ぶ。名泉郷区長の長谷部衛さん(49)は「こんなはずではなかった」と肩を落とす。

 名泉郷区誌などによると、このニュータウンは山を切り開き開発。面積は約59万平方メートルで、1973年に造成が完了した。長谷部さんは99年、結婚を機に転入。福井市に住む親が長谷部さんの将来のために購入した土地だった。「スーパーや交番、小学校を建設する計画だった」というが、住宅建設は2000年ごろをピークに頭打ちとなり、思い描いた街並みは実現しなかった。

 現在は区の役員のなり手がおらず、夏祭りは開催困難に。5年ほど前から子ども会などが引き継いで何とかやりくりしている。長谷部さんは「区としてのまとまりがなく、区を今後維持できるのか」と不安を口にする。

 ■進む少子高齢化

 一方で、順調に入居が進んだ地区では、少子高齢化が影を落としつつある。

 「福井市の中心市街地から近く、手頃な価格だった」。福井市グリーンハイツ1丁目の東出駿隆さん(74)は30歳のころ、グリーンハイツ(旧清水町、1970〜79年度開発)の分譲住宅入居者募集の広告を見て申し込んだ。東出さんにとって憧れのマイホーム。「同世代が多く、地域活動も活発だった」と振り返る。

 グリーンハイツは当初、37万平方メートルの敷地に分譲住宅643戸、県営住宅7棟(204戸)が建設された。県住宅供給公社(2010年度末解散)が手掛けた中で最大の規模を誇る。小学校や保育所があり、スーパーマーケットも出店した。

 しかし開発完了から40年近くがたち、今後は急速に高齢化が進む。グリーンハイツの人口が9割を占める清水北地区の75歳以上の後期高齢化率は11・09%(3月1日時点)で、市全体の13・95%を下回っているのに対し、65歳以上の高齢化率は32・75%と市全体27・82%を上回る。清水北公民館の前館長、筒井英輔さん(75)は「団塊の世代が多く、10年後、一気に高齢化の波が押し寄せるのではないか」と危惧する。

 少子化も加速度的に進んでおり、清水北小の児童数は1985年度の469人から、2016年度は128人にまで減った。

 「ひとり立ちした子どもが地区外に出て行き、戻ってくる人が少ない」と、清水北地区自治会連合会の宇野哲夫会長(62)。「先祖代々受け継がれた土地ではないため愛着があまりない。2世帯住宅にしようにも区画が手狭で」と寂しげに話した。

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