コウノトリのつがいの巣に誕生したひな(中央下)=25日、島根県雲南市(同市教委提供)

 島根県雲南市教育委員会は26日、国の特別天然記念物コウノトリのペアが同市内で温めていた卵がふ化し、少なくともひな1羽の誕生が確認されたと発表した。ペアの雄は、福井県の飼育・繁殖事業で2014年に越前市白山地区で生まれ、15年に同地区で放鳥された「げんきくん」。県内で育まれた命が、野外で次世代につながり、コウノトリの生息域拡大に結びついた。

 兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(兵庫県豊岡市)と雲南市教委によると、野生のコウノトリが1971年に姿を消して以来、野外でのふ化は、豊岡市周辺を含む近畿北部を除くと、徳島県鳴門市に続き全国で2例目という。

 げんきくんのペアの雌は豊岡市の人工巣塔を12年に巣立った4歳で、雲南市大東町の田園地帯にある電柱に巣を作っていた。25日に卵を温める親鳥が長い時間立ち上がり、胃にためた餌を吐き出すなどの行動がみられた。

 同市教委が巣の中を撮影した結果、写真で少なくともひな1羽が確認された。動画では2羽いるように見えるといい、今後詳しく調べる。

 福井県は兵庫県との共同研究で、コウノトリの飼育・繁殖に取り組んでいる。郷公園にいたコウノトリのペアを借り受け、2011年12月から越前市で飼育している。このペアに、他ペアの有精卵を温めさせる「托(たく)卵」で、げんきくんが生まれた。

 げんきくんの成長を放鳥まで見守った越前市白山・坂口地区の住民らでつくる「水辺と生き物を守る農家と市民の会」の恒本明勇(あきお)会長(70)は「白山を飛び立ち、全国を飛び回ったげんきくんが繁殖まで到達し、とてもうれしい。コウノトリと共生する地域づくりに一層力が入る。越前市と雲南市の交流につながってほしい」と話している。

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