米ニューヨークで発表した越前打刃物を手に今後の展開について話す三木さん(左)と加藤さん=3月、福井県越前市のタケフナイフビレッジ

三木あいさんたちが日本の美を詰め込んだ越前打刃物の新シリーズ「EZZEN」

 福井県越前市のタケフナイフビレッジ協同組合の若手職人らが昨年末に米ニューヨーク(NY)で発表し、好評を得た越前打刃物の新シリーズ「EZZEN(エッツェン)」。全体のデザインを担当した三木あいさん(37)=越前市=は、コンセプトとした「古いものこそ新しい」という発想を幼いときに木工職人のおじから教わった。デザイナーとしてNYで5年間働き、20代後半で古里に戻った三木さん。「背伸びをしなくても、福井にあるもので世界を十分びっくりさせられる」。福井に対する可能性を誰よりも今感じている。

 福井の伝統工芸は子どものころから身近にあった。中でも木工職人のおじ、横田利宏さん(74)=越前市=の仕事を見るのが大好きだった。仕事仲間の漆や越前箪笥(たんす)、和紙すき、打刃物の職人さんの作品にも触れることができ、自然と伝統工芸のよさが分かるようになった。

 NYは、洗練された日本の文化を理解するまち。そこで披露する新作にはベテラン職人のセンスが必要と考え、おじに製品デザインを依頼し、自分がロゴを含めたトータルデザインを担当した。2人でこだわったのは、使い込まれた大工道具のような、手になじむ無駄のないデザイン。口金に眼鏡素材のアセテート、柄に越前箪笥の桐(きり)を使うなど、丹南の技術を生かすアイデアも盛り込み、加藤義実さん(47)をリーダーとする打刃物の若手職人たちが半年がかりで形にしてくれた。

 NYのシェフたちは「こんな手作り感がある包丁は見たことがない」と喜んでくれた。実際にNYの店を回っても、越前打刃物を超える質の包丁は見つけられなかった。

 背伸びして都会ぶっている田舎は格好悪い。どうやって県外から人を呼ぼうかと考えるより、まずは自分たちが身近にある手仕事や自然を楽しんで生活を豊かにすることを考えた方が、結果的に福井を好きな子どもたちが育ち、やがてその子たちが外から人を呼んでくる。地元の若者が地元を好きになることが今一番大切だと思う。

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