遠隔操作で水田に水を送り込む多機能型自動給水栓=昨年6月、福井県あわら市

スマートフォンやタブレット端末を使った遠隔操作で水田に水を送る多機能型自動給水栓

 農林水産省が昨年度、福井県あわら市の農事組合法人「イーノなかのはま100」の水田で行った、九頭竜川下流域パイプラインと情報通信技術(ICT)を組み合わせた水管理省力化の実証試験結果がまとまった。スマートフォンやタブレット端末を使った遠隔操作で水田に水を張ることができる「多機能型自動給水栓」の効果などで、これまでの水管理時間を5割程度削減できた。

 水管理には、ほ場までの移動、見回り、給水栓の開閉をはじめ、壊れた水路やあぜの修復といった作業が含まれる。2015年度の全国のコメ生産の統計値では、稲作期間を通じ10アール当たり平均2時間49分かかった。1ヘクタールならその10倍の時間がかかる計算だ。

 「イーノなかのはま」では昨年3月に水田約20ヘクタールに、多機能型自動給水栓や地下水位制御システム「フォアス」を設置。5人がこれらICTを取り入れた水田、別の5人が従来通りの水田で水管理を行い、両者の日報を比較して効果を検証した。その結果、ICT導入によって5割程度の時間削減につながった。

 多機能型自動給水栓は、タイマー型、リモコン型、遠隔操作型の3タイプある。重宝されたのが、スマホや自宅のパソコンから給水バルブを開け閉めできる遠隔操作型。イーノなかのはまの高橋正徳代表理事は「ハナエチゼンが出穂する直前の7月末に3日間、東京に出張したが、向こうからでも田んぼに問題なく水を張れた」という。

 県などは、パイプラインの受益地域で「夜間かんがい」を推奨。夏場の夜に水田に冷たい水を張り、稲のストレスを回避してコシヒカリの品質を高める取り組みで、遠隔操作なら夕方や夜に水田に出向くことなく自宅から給水、止水の操作ができる。

 生産者の高齢化が進む中、水管理の労力削減は大きな課題の一つで、ICTを駆使したスマート農業の普及は「若者に農業に目を向けさせる動機付けにもなる」(北陸農政局九頭竜川下流農業水利事業所)と期待される。

 実証試験は本年度も行われる。高橋代表理事は「昨年度の試験で水管理が楽になったのは間違いない。引き続きメーカーに機能の改善点などを助言しながら、費用対効果を確かめていきたい」と話す。本年度は、農地が集約化されず水田が事務所や自宅から遠いところに点在する集落営農法人も試験対象に加える計画。同事業所の担当者は「集約化が進んだイーノなかのはまよりも大きな削減効果が出てくるのでは」としている。

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