光を当てて、コウノトリの卵を調べる郷公園の船越主任飼育員(左)ら=8日、福井県越前市中野町(福井県提供)

 福井県越前市白山地区で県が飼育している国の特別天然記念物コウノトリの「ふっくん」「さっちゃん」ペアが今期産んだ5個の卵について県は8日、全て無精卵だったと発表した。1970〜71年に旧武生市(越前市)に滞在し、保護されたくちばしの折れたコウノトリ「武生(コウちゃん)」の血統の有精卵3個を譲り受け、同ペアが温めてふ化させる托卵(たくらん)を行う。早ければ14日前後に、武生の孫に当たるひなが誕生する見込み。

 同ペアが4月16〜25日に産んだ5個の卵を巣から取り出し、兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(同県豊岡市)の船越稔主任飼育員らが有精卵か無精卵かを調べた。専用の機器で光を当てて中の様子をみたところ、血管などの発育を示す影が確認できなかった。

 托卵は2014年と昨年に続いて3回目で、武生の血統は初めて。譲り受ける卵は、郷公園で飼育されている武生の一人娘「紫」(22歳)が4月9〜15日に産んだ。5月10日に郷公園から白山地区に移送し、天候が良ければ同日中に同ペアに抱卵させる。

 越前市白山公民館で会見した県自然環境課の佐々木真二郎課長は「ふっくん、さっちゃんの卵が無精卵だったのは非常に残念だが、托卵によって放鳥を続けることで、コウノトリの県内定着の可能性が高まり、里地里山の保全が進む価値がある」と意義を強調した。国や郷公園などと協議しながら、托卵で生まれるひなの年内の放鳥を検討する。

 武生の血統の托卵に関して、船越主任飼育員は「武生の血統は遺伝的に放鳥する優先度が高い。できれば福井にゆかりのあるもので托卵をしたいと考えていたが、今回は相互の産卵時期が合った」と説明した。

 武生は1971年、白山地区で保護され豊岡市の人工飼育場(現在の郷公園)に移り、94年に紫を生み、2005年6月まで生きた。紫は、これまでに武生の孫を計9羽もうけ、ひ孫、やしゃごも誕生している。

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