墓じまいの際に放置されたとみられる墓石=3月、福井市の足羽山公園西墓地

 たくさんの墓が並ぶ通路の脇には、細長い石が無造作に積まれ、覆い隠すように草が生えていた。石には家紋のようなものが彫ってある。約1万5900基を抱える福井市の足羽山公園西墓地。管理する市公園課は「墓じまいをした際の墓石が、放置されているのだろう」と話す。

 墓じまいの主な理由は、子どもが住む別の場所に墓を作るためだ。市が管理する西墓地と東山墓地公園の墓じまいの数は2012年度は計21件だったが15年度は35件。厚生労働省によると、08年度の墓の移転件数は7万2483件だったが、15年度は9万1567件と26・3%増えた。

 若者を中心とした地方から都市部への人口流出が止まらない。福井県への転入と転出の差を示す社会減の累計(1975〜2014年)は5万3381人。人の移動とともに、先祖代々の墓が全国でさまよっている。

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 「長年放置された無縁墓も増えつつある」と話すのは県石材業協同組合の水間久一理事長(59)。土台が崩れたり、草で覆われたりした墓は西墓地でも見られる。

 興味深いデータがある。熊本県人吉市は13年、同市の1万5128基を調査したところ、数年お参りされていない“無縁墓”は、4割以上に当たる6474基に上った。第一生命保険の調査では、自分の墓は「いつか」「近いうちに」無縁墓になると答えた人は54・4%に上った。

 ライフスタイルの変化や少子化に伴い、県内でも1人暮らしの高齢者が増え続けている。福井市のある住職は「家族離れ離れという形が当たり前になり、『○○家の墓』という仕組みが限界を迎えている」。別の住職は「個人、もしくは血縁によらない合同墓が主流になっていくだろう」と見通す。単身高齢者が、生前に合同墓を予約するケースもある。

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 人には親がいる。その親にも親がいる。10代さかのぼれば、その数は2千人を超える。福井市門前町の妙國寺の奥野文長住職(52)は「自分が沸いて出たような感覚になり、命のつながりを感じていない人が増えていないか」と話す。

 越前市出身の70代夫婦は都内で2人暮らし。娘2人は結婚し姓が変わった。妻は「いまさら福井の墓に入るつもりはない。私たち夫婦は東京の合同墓に入る」と言う。

 娘たちも都内に住んでいるが、仕事や子育てに忙しく、会うのはせいぜい年に数回。「お墓の話をしたことはないが、私たちの姓が入ったお墓の面倒をずっとみてくれるとは思えない。(子どもに)遠慮しちゃっているのかな」。

 20代で上京し、高度経済成長期を必死に駆け抜けてきた人生を振り返りながら「やっとひと息つけると思ったら、家族はバラバラになっていた。それも仕方ないか」と力なく笑う。

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 荒れた墓、簡素化された葬儀、減り続けている寺などを通して、社会の課題を探っていきます。

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