引き取り手がいない遺骨を預かっている岡崎住職。「行き場をなくした骨は今後も増えるだろう」と話す=3月、福井県越前町の祐善寺

 本尊の阿弥陀如来をまつった須弥壇(しゅみだん)の後ろにある小さな戸棚には16個の骨壺が並ぶ。引き取り手がない骨だ。

 福井県越前町上糸生の祐善寺の岡崎賢住職(68)は、社会福祉士として2003年から、認知症の高齢者らの後見人をしている。被後見人は金銭トラブルなどで家族と疎遠になった人が多い。

 「被後見人が亡くなり親族に連絡しても『財産は相続するが、骨はいらない』と言われるケースがある」。通夜葬儀の参列者がなく、住職自らが火葬場で点火ボタンを押し、骨を拾うこともある。

 現在、19人の後見人をする岡崎住職は「行き場をなくした骨は今後も増え続けるだろう」。今年中には境内に、こうした骨を納める墓をつくろうと考えている。

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 福井市篠尾町の浄福寺が2004年に整備した霊園「酒生浄苑」の中央には、高さ約7メートルの「永代法要墓」がそびえる。墓を守る家族がいない場合などに、他の人たちと一緒に入る「合同墓」だ。

 この墓は、引き取り手がなくなった町内の無縁仏を供養する目的でつくった。しかし数年前から、インターネットなどを見て「お金が無くて墓を建てられない。何とかしてほしい」といった相談が、県内外から来るようになった。

 酒生仁弥住職(54)は、直接会って事情を聴いた上で、遺骨を預かるようになった。現在は、県外の4体を含む10体の遺骨を本堂地下の納骨堂に納めている。酒生住職は「さまざまな事情を抱えてここに来るが、みんな弔いたい気持ちを持っている」。10年後をめどに、あらためて親族に確認した上で合同墓に納めるという。

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 「父の骨など見たくもない」と、遺骨の引き取りを拒否した女性が数年後、岡崎住職を訪ねてきた。「あの時はそれしかできなかった」。涙を流して後悔を語り、本堂で手を合わせて帰った。以来、お盆には寺を訪れるようになった。毎年お布施を添えた手紙を送ってくる親族もいる。岡崎住職は「親を許せないという思いを経て今、親子の命のつながりを感じているのかもしれない」と話す。

 遺骨の取り扱いに困り、電車の網棚に骨壺を置き去るケースは全国的に多い。15年には、都内のスーパーのトイレに、遺骨を捨てる事件が起きた。一方、ネット上では全国の寺で遺骨を郵送で受け付けるサービスが始まっている。申し込めば、送骨梱包キットが送られてくる。岡崎住職は「遺骨がモノのように扱われている。無縁社会の象徴」と警鐘を鳴らす。

 死後について、制度面での改善を求めるのは第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどりさん(48)。「日本の福祉政策では、医師が死亡診断書を書いた時点で、亡くなった人は『人』でなくなる」と指摘。住み慣れた地域で最期まで暮らせるように支援する地域包括ケアシステムの中に、墓まで組み込むことで「みんなが安心して死ねる社会が実現する」と話す。

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