「想像力こそが全てを変える」。これは貴志祐介著「新世界より」の最後の一行です。全く同感。想像力一つで上下巻1800枚の書き下ろしを書いています。私は人間の生活は全て想像力から始まると思っています。想像力の欠如から後先を考えずに凶悪事件を起こしたり、自分の進むべき道が分からなかったりするのではないかと思います。そして豊かな想像力はノーベル賞を受賞するような研究の原動力にもなります。

 その貴志祐介に注目したのは1997年、第3回日本ホラー大賞に輝いた「黒い家」。新聞広告の惹句に乗せられて買いましたが、これが大正解。大概は惹句負けする本が多いのに面白く、それから出版された本は全て持っています。その中で、やはりホラーの「クリムゾンの迷宮」も大好き。リストラされホームレスになった主人公が目を覚ました時から始まる物語。何もない荒涼とした土地で生き残りを賭けたゼロサム・ゲームが始まります。これも想像力の産物です。ってどこにワインが出てくるんだ? まあまあ。

 この「クリムゾンの迷宮」の冒頭、主人公は自分の置かれた場所が判らず、いろいろな考えが頭を巡ります。そんな時、小川の渦を見て「南半球と北半球では渦巻きが反対回りだったはず」と考えるシーンがあるんです。このシーンをいつもスワーリングすると思い出すの。私は…。

 スワーリングはワイングラスをくるくる回してワインの香りを引き出すこと。ワイン好きであれば無意識のうちにやっています。スワーリングとは攪拌するという意味。ただ、回せば良いっていうもんではなく、一応お作法があって右手で回す時は反時計回り、左手の時は時計回り。大概ワイングラスは右側に並ぶので左手で…というのは考えにくいのですが、そういう感じ。これはクルクルに失敗した時に隣の人にワインをかけない配慮だという事です。

 でもね。赤ワインがかかっても対処法はあります。白ワインで拭くと綺麗になりますよ。よくワインをこぼしてシャツやネクタイに染みを作っていた人が困り果ててフランス人に聞いたところ、返ってきた答えだそうです。確かにフランスへ行ってもワインの染みだらけのお洋服を着ている人は見た事ないですもの。この薀蓄を語ればワインをかけられた人も許してくれそうな気がしますけど…。

 10年以上前の赤ワインブームにワイン・バーなどでみんな一斉にクルクルやっていましたね。端で冷静に見てるとちょっと恥ずかしい。シャンパンまで回している人もいたもんね。泡が減るから基本的には回さないのですが、実は小さいシャンパン・マドラー〔プティ・フエ・ア・シャンパーニュ〕なる器具があります。ヨーロッパなどで人前のゲップが大変失礼な為、泡を取り除く為に使います。せっかくボトルの中に閉じ込めた泡をなんて勿体無いと思うものの私も1本欲しいな。

とにかく、ワイン好きと食事に行ったらよ~く観察してみると面白いですよ。無意識にシャンパンどころか水もクルクル回していますから…。
【しりとりワード!】

ヴィーノ→ノン・ヴィンテージ→淑女のため息→キアンティ→田舎方式→キャヴィア→アペリティフ→ブラインドティスティング→クリスタル→ルビーポート→吐器→貴腐→フォキシー・フレーバー→バッカス→スワーリング

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