「ソフィアズハース」で取り組んだエクササイズ Copyright(c) Sophia’s Hearth Family Center

 アメリカでは11月の第4木曜日はサンクスギビング、感謝祭でした。家族で七面鳥などのご馳走を食べる日。おせち料理のように定番があり、毎年同じものを食べます。新しい物好きのアメリカ人もこのときばかりはあまり変り種を歓迎しません。私は今年で11年目、初めて七面鳥がおいしいと思いました。上手に作ってくれた方に感謝、食べ物の恵みに感謝、家族、友達に囲まれていること感謝。クリスマスの頃初めてニューヨークに来たので、もうすぐこちらでの生活も丸12年になります。夫、4歳の娘と暮しながら、気づいたこと、日本に紹介したいことを書いていきたいと思います。 アメリカ東部、ニューハンプシャー州にある、Sophia's Hearth Family Center ソフィアズ・ハース ファミリーセンター。まだ日本では無名かと思いますが、ぜひ知っていただきたいところです。ハンガリーの小児科医エミ・ピクラーの実践哲学とシュタイナー教育の両方を北米に紹介することを使命として、親子教室から始まり、今春から新園舎で0歳からの保育園も開園しました。私がこの夏卒業した1年のプログラムも含め、夏の集中講座、週末の講座と、保育者や親の教育にも力を入れており、アメリカでは特にシュタイナー教育関係者に認知されてきています。シュタイナー教育は日本でも有名になってきていますが、今、グーグルでピクラーを検索してみましたら、日本語ではたった数件ヒットするだけでした。

 エミ・ピクラー(1902-1984) は1946年、ブダペスト市政府から要請を受け、戦争孤児のための孤児院をスタートしました。現在も同じ場所にあり、その住所、ローツィ通りから、通称ローツィと呼ばれています。開設当初から現在まで、子ども一人一人の綿密な記録は膨大な量になり、ピクラーの哲学を実証しています。 おむつ交換などのケアに驚くほどの注意を払い、たっぷりの時間と愛情をかけて行うことにより、子どもは十分満たされ、他の時間は子どもは独立して遊びに没頭します。自発的な運動・遊びを尊重するために、大人は安全で探索しがいのある空間を用意し、遊びの途中で横から不用意に邪魔をしたりしません。細心の注意をはらい、愛情をこめて丁寧に行うケアにより、安定した信頼関係が築かれ、子どもの自発的遊びが花開きます。ゆるぎない信頼関係と子どもの自発心の尊重がピクラーの2本柱です。その基本にあるのは、幼い子どもであっても、一人の人間として畏敬の念をもって接すること、子どもの尊厳を尊重することです。子どもを“子ども扱い”しないことは思ったよりも難しいものです。無意識で、親心で、周りがみんなやっているからよかろうと、つい犯してしまう間違いは多いものです。 たとえば、抱き上げるとき、突然ひょいっと取り上げたりはしません(私もやりました)。ちょっと想像してみてください。もし大人が後ろからひょいと捕まえられたら、びっくりして怒り出す人もいるでしょう。赤ちゃんはただそこにいるようでも、今何かを見つめていたり、何かやろうとしているのだから、そっと近づき、赤ちゃんの目を見て、「今からお風呂だから抱っこしますよ」などと伝えてから、注意を払いながら決められた手順で抱き上げます。さながら、茶道の作法にはすべてわけがあり、形式だけに見えて実は無駄一つない究極の手順であるのと同じようです。