いよいよ夏休みが始まりました。さあ、どうしましょう、というお母さん、お父さん方も多いのではないでしょうか。

実は私も、親として初めての夏休みです。これまでは娘を保育園へ通わせていたので夏休みはありませんでした。アメリカではご存知のように8月末か9月が新学期ですが、夏休みの始まりが5~6月からです。娘の通う幼稚園ではなんと3カ月間以上の夏休みがあります。

こんなに長い夏休み、子ども達はどう過ごしているのでしょうか。アメリカにはサマーキャンプといって、泊りがけ、または昼間だけ通うプログラムがたくさん運営されています。だいたい4、5歳くらいから昼間だけのキャンプに参加でき、大きくなるにつれて、数週間も泊まりがけで出かけるような内容のものも増えてきます。動物の世話をしたり、カヌーにのったり、普段できないようなことを体験する素晴らしい機会です。

うちの娘はネイチャーキャンプという、自然の中でたっぷり遊ぶプログラムに参加しています。毎日いろんなことを経験して本当に楽しそうで、どんどんたくましくなっているのが感じられます。私も夫もアウトドアタイプではないので、私達では逆立ちしても与えられない体験をさせてもらって感謝です。同年齢の友達だけでなく高校生のカウンセラー達との交流からも大きく成長しているようです。

しかしながら、そのキャンプももうすぐ終わりです。その後まだ1カ月以上も夏休みが続きます。どうやって毎日を過ごしましょうか。

いつも耳が痛くなるほどよく聞くのが、「規則正しい生活をしましょう」だと思います。これこそ言うは易し、ではないでしょうか。どうやったら規則正しい生活ができるでしょうか。特に小さい子どもがいる家庭でどんなことから手をつければ良いでしょうか。

1)時間割を作る

私の体験からお勧めできることは、時間割表を作ることです。そうです、小学校時代から壁に貼ってあったあれです。ただ大きな違いは学校の時間割のように強制されるものではなく、あくまで自分が主人公。自分や家族の為に自分が作るものであるということ。柔軟に考え、実験精神をもって時間割を常に改善しながら生活を良くする道具とする事です。そうでなければ時間割の奴隷になってしまい、なおさら大変になってしまうからです。

考えてみれば、学生時代はもちろん、大人になっても多かれ少なかれ時間割表を外から与えられているのが現実です。会社勤めなら出社、退社時刻、それに合わせた電車の時間、お昼休み、会議や接客などなど。親になったらもっと忙しくなり、特に子どもが大きくなれば幼稚園や学校、お稽古事の送り迎えなど盛りだくさん。手帳などで予定を管理している方がほとんどだと思います。

そんな中、赤ちゃん、または幼稚園入園前の幼い子どもとの暮らしには、自分で時間割を作り出す自由が大いに与えられています。そして長い夏休みは幼稚園児や小学生以上の子ども達にも時間割は重要です。仕事をしているお母さんは特に限られた時間を有効に使うために、一日の計画表をベースに後に述べる週間計画表を作ることををお勧めします。

2)繰り返しの魔法

計画を立てたからといって、子どもに「はい、10時だから、お散歩に行きますよ!」と号令をかけても動きません。ですから時間割は大まかに作り、お母さんの頭の中に入れておきます(もちろん壁に貼ってもいいのですが、それを子どもに強制する道具にしないということ)。保育園や幼稚園で少数の先生がどうやってたくさんの子どもの保育をしているのか、その秘密は、繰り返しです。

毎日毎週同じ流れを繰り返すことによって、子どもはそれを体で覚えていきます。毎日繰り返されることというのは、安心感を与えてくれます。子どもでも次に何が起こるか見通しが持てるからです。毎日次に何が起こるかわからない生活というのは大人でも大変不安なものです。いつものあれ、が通じない世界、つまり海外旅行に出ているようなものです。

例えば夕ご飯を食べたらお風呂にはいる、歯を磨く、髪を乾かす、パジャマを着る、おはなしの時間、消灯、と毎日同じ事を同じ手順で繰り返すのです。このように身についた習慣は繰り返されることが当然となるので、子どもの抵抗、イヤイヤが起こりにくくなります。しつけずにしつけができるのです。よくありがちなのが、お父さんにつきあって夜食をちょっと食べさせたり、新しいおもちゃで遊びだすのをそのまま許してしまったり、子どもの移り変わる興味関心に流されて脱線ばかりになってしまうことです。

3)リズムが乱れるときは安心材料を増やす

どうしてもいつもと同じにできないことが起こるのは当然です。そんなときは、結果として子どもが不安定になるのは当然だと思い、後でかんしゃくを起こすかもしれない、わがままを言うかもしれないと構えていれば、大人として冷静に対処できます。親も反応して怒ってしまい子どもがもっと泣く、という負のスパイラルに陥ることを予防できるのです。

例えば旅行に出ているときは、みんながわくわく興奮状態ですし、当然いつもと同じわけには行きません。そんなときは、夕食のメニューを子どもが食べなれていて好きなものにする、刺激が多いレストランで食べないで持ち帰りにして家族だけの静かな食卓にする、いつもの枕や毛布を持って行く、抱っこを多めにするなどして安心材料を増やしてあげると乗り切ってくれます。出先で人様の目もあり、そんな状況下でも叱ってしつけようとしている場面をよく見かけますが、嵐の中で泳ぎを覚えようとするのと同じ行為です。子どもにとっては叱られて泣いて嫌だった思い出だけが残り、しつけにも何にもなりません。嵐が去った平常の穏やかな海でなら、溺れずに泳ぎをマスターすることができるでしょう。

4)十分時間をとる

活動そのものに時間をたっぷり取ることも大事ですが、活動から活動への移動や準備、片づけにも十分時間をとります。例えばお散歩に出るのであれば、天気に応じてジャケットをはおる、靴を履く、帽子をかぶるなど、すべてにたっぷり時間をとり、子どもがなるべく自主的に取り組めるように見守り助けます。これら一つ一つの動作が子どもにとってかけがえのない学びの場であるからです。それを「早く外に出るために、さっさとやってしまうこと」としてしまってはもったいないのです。 言葉がけも「早く準備しなさい!」ではなく、「靴を履きなさい。はい、こっちの足・・・」などと、具体的に何をするか言葉で示すと子どもに分かりやすくちゃんと反応してくれます。

5)子どもと一緒に家事をする

家事はもちろん大人がさっさとやったほうが何倍も早く済みます。でも時間を味方につけて、洗濯も掃除も子どもと一緒に楽しくできないか、そんな風に考えてみるとどんどん創造的アイデアが出てくるものです。子どもは真似をする生き物です。お母さんが楽しく心を込めてやっていることは、子どもにとって一番真似したいことなのです。

お茶碗を運ぶお手伝いなど、2、3才になればできます。湯飲みやお箸を並べるのもお母さんが毎回楽しそうに(これがポイント!)やっていれば、子どもは自然に「やる!」と言ってくるはずです。ただ、時間がないときに下手に手伝ってもらうと、イライラする結果になってしまいます。やはり時間をたっぷりかけて、準備自体を楽しむ心持ちが必要ですので、時間割にその時間を組み込むのです。

いずれ成長して、本当に助かるわと思う日がやってきます。

6)心を込めて楽しく仕事をする 、その姿を子どもに見せる

私は部屋の掃除は苦手ですが、なぜか食器洗いなら苦になりません。娘はあるとき、お茶碗を洗うと言い出し、踏み台に乗って自分のお腹も流しまわりもびちょびちょにしながら洗ってくれました。もう一度私が後で洗うしかないなーと横で見ていると、最後に水を止めて、食器洗いの布をいつも私が掛けるところに掛けました。それに感心していると、今度は排水口のゴミ受けを取り上げたと思うと、それをゴミ箱の中で逆さにし、トントントン、と3回ぶつけて空にしました。それを見て私は笑ってしまいました。自分でも気づいていませんでしたが、私は娘がやったようにいつも3回トントントンとやっていたからです。子どもは本当に良く見ていてそっくり真似するので、真似されるに値する行動を取らないとと、改めて思わされました。

洗濯物干しならば、子ども用に小さい物干しを用意し、お母さんの隣で靴下を担当してもらったり、人形の洋服を1、2枚洗濯してあげてそれを干してもらったりできます。掃除ならば、掃除機は音もうるさくて子どもと一緒にやるには不向きかもしれませんが、拭き掃除や掃き掃除なら、子ども専用の雑巾や小さい箒を用意してあげるだけで、しばらく夢中になって掃除してくれます。掃除といってもかえってごみを散らかすかもしれません。それでも、時間が味方であれば、イライラっとならず、箒を一心に動かす子どものまなざしの可愛さに気づき、思わずニッコリしてしまうでしょう。

ですから、いつも子どもが寝ているうちに家事をこなしているお母さんは、まず好きな仕事、苦にならない仕事からお子さんと一緒にやってみることをお勧めします。大人が意味のある仕事をしている姿を子どもに見せることは、子どもにとってすばらしい学びなのです。ただでさえ、私たちの生活は機械化され、職業的にもコンピュータ上か電話での仕事が増えてきた現代です。私たちの手によって何かが作り出されたり、きれいに整えられたりするプロセスを子ども達が何度も見て、体の中に記憶されることは人間としての健全な発達の確かな土台になっていきます。

7)予定で一杯にしないで生活をシンプルに

例えば、小さい子どもとお家で過ごすお母さんを念頭にこんな例を作ってみました。あくまでも例ですので各ご家庭の必要に応じて自由に組み立ててください。


予定表の例こうしてみてくると、何も特別なことをせず、生活をぐんとシンプルにする利点が分かっていただけるのではないかと思います。だいたいの食事時間とその合間の流れだけ決めてあるだけなので、この骨組みの上に様々な変化をつけることも可能です。基本的に3度のご飯を食べて、外に行ったりお母さんが家事をする横で遊んだりしながら、1日が過ぎていきます。

幼い子どもにとって家庭は実は大きな世界であり、学びの連続です。お稽古事やお出かけで予定をいっぱいにするのは教育熱心なようですが、刺激過多になってしまい、子どもにとっては実はマイナスです。いつも刺激を受ける側に徹して、自分で考える力、遊びを作り出す力が育たないからです。今ある生活をじっくり充実させる方が豊かな実りを得られるのです

8)1日の流れを元に1週間の時間割表を作る

できれば、この毎日の時間割を元に1週間の時間割をつくり、家事や買い物、お母さんの息抜きの時間なども組み込めると理想的です。お父さんや周りの協力者も毎回決まったパターンであれば参加しやすく、負担と感じなくなります。 アメリカでは食品の買出しも洗濯も週1回(洗濯物は干さず乾燥機にかけるのが一般的という事情から)の家庭がほとんどです。今までのやり方を続けてただ漠然とうまくいかないなーと落ち込むのではなく、時間割表を作ることによって目に見える形になり、なぜうまく行かないか、ではこうしてみようかなどと具体的に考えやすくなります。

9)時間割を使って、計画・実践・見直しを繰り返し、スキルアップ!

最後にもう一度念を押したいのが、自分で作った計画表の奴隷にならないこと。しばらくやってみてうまく機能しないところはどんどん改善していくことです。はじめはやる気満々で、つい自分の持てる能力以上のところを計画してしまいがちです。それでは当然続かず、挫折してしまいます。新年の抱負などで高すぎるハードルを設定しては三日坊主に終わり自分を責めるという悪循環を私も何度も繰り返しました。

しかし、悪いのは私ではなく、目標設定の仕方が悪かったのだと気づきました。つまり、まずは簡単に跳び越えられるハードルから始めて、とにかくそれを続けていくことが大事なのです。継続は力なり、そのうち必要な筋肉が鍛えられて、いずれは高いハードルも跳べるようになります。夢は大きく、でも実行計画は手頃なところからにしましょう。

忙しすぎてそんな計画を立てている時間もない、という悲鳴が聞こえてきそうです。私もまさにそうでした。でも、完璧な計画など有り得ないのだから、背伸びせず小さなことからとにかく始めようと気づくのに1カ月かかりました。そうです、私は1カ月間も悶々と計画を立てる計画をしていたのです! それよりは、期限付きのお試し期間だと思って始めると失敗のプレッシャーを軽減できます。1週間、2週間などと期限を決めてとにかくやってみる。うまく行かなかったら止めてまた考える、これなら挫折感なく、実験感覚でできます。

難しく感じるところはどうやったらシンプルにできるか(例:おやつはいつも果物と決める)と、ダウングレードする方向で考えましょう。そうやって計画、実行、見直しを繰り返すことにより、どんどん実力がついていきます。最初は到底できなかったお菓子作りやクラフトをする余裕も少しずつ出てくるでしょう。普段の生活のリズムがしっかりしていれば、少々遠出してそのリズムが乱れてもすぐ回復できるようになり、どんどん冒険ができるようになるでしょう。

そして人生の様々な分野でこのスキルは生きてきます。子どももそんな親の後姿から大きな学びを得ています。 何よりも子どもが落ち着きを見せ、その子の良さがいっそう輝きを増すのがはっきり見て取れるはずです。

10)「ゆりかごを動かす手は世界を動かす」

以上、私達は子どもとの何気ない日常の中にたくさんの学びの場、成長の機会を親子ともに与えられていることを感じていただけたでしょうか。これが、「ゆりかごを動かす手は世界を動かす」といわれる理由だと私は思います。私達は子育てを通して、大変大きな仕事を与えられています。

計画作りから生まれる繰り返しとリズムはこの親業をうんと楽に、そして楽しくしてくれる強力な助っ人です。私達のがんばっている肩の力を抜く余裕と、超スピードで成長している子どもの「いま」を最大限に受け止め、愛し、喜ぶ幸福を与えてくれるでしょう。

次回は上記のような時間割をスムーズに実行する上で、もう1本の柱ともいえる、週の献立計画を作ることについて私の実践を交えながらお話したいと思います。楽しい夏休みを!

【参考】
Payne, Kim John and Ross, Lisa M. .Simplicity Parenting: Using the Extraordinary Power of Less to Raise Calmer, Happier, and More Secure Kids. Ballantine Books. 2009

Satter, Ellyn. Secrets of Feeding a Healthy Family: Orchestrating and Enjoying the Family Meal. Kelcy Press; 2nd edition. 2008.

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