高層気象観測は、気球に観測器と送信機を付けて飛ばしますが、最高到達高度は40kmです。さらに上空までの観測はロケットを使用します。

気球観測は上昇中に観測して、風船が破裂したら観測終了ですが、ロケット観測は気球と逆で、終着高度に達した後、パラシュートにつけた機器で降下しながら観測します。

気象ロケット観測所は、岩手県大船渡市三陸町綾里の綾里崎の中間にある立石山中腹海抜260mに、1970年に開設。同年7月15日に初発射、北太平洋唯一の観測所でした。2001年までMT-135Pロケット(※)を毎週1回打ち上げ、合計1119回打ち上げ、平年値が算出できる程の貴重なデータを取得ました。

雨や雪を降らすのは対流圏で、高度は約11km(低緯度では高く、高緯度では低い、また季節によっても変動する)ですが、対流圏より上部の成層圏の振る舞いが対流圏にも影響しますので、ロケット観測は貴重な資料です。

綾里の観測による平年値を見ますと意外な事が分かります。9月は高度20kmで-60℃、50kmは-7℃。1月は高度20kmで-55℃、47kmは-13℃と、上空に行くほど気温が高くなっています。成層圏はオゾンの生成で気温が高くなるからです。

ロケット観測所は2001年以降、大気環境観測所として、エアロゾル(※)ライダーを用い、温室効果ガスやオゾンなどの観測を続けています。

北半球の中緯度以北の高層は偏西風と呼ばれる西風が吹いています。南半球でも同じですが、赤道付近の上空は四季の変化と異なった振る舞いをしています。1883年、インドネシアのクラカトア火山は大噴火して大量の火山灰が成層圏まで舞い上がり西に流されましたが、約2週間で元の場所に戻ってきたと記録されています。約70年後の1957-1958年に実施されました国際地球観測年の観測資料から、赤道付近の高層風は準2周期変動(26~28ヵ月)と呼ばれる西風と東風の変動が分かりました。

※MT-135Pロケット 東京大学宇宙航空研究所が気象庁の協力の下に開発した単段式個体燃料ロケット。全長3.3m、直径13.5cm、重量70kg、到達高度60km。

※エアロゾル(aerosol) 気体の中に微粒子が多数浮かんだ物質。微粒子には液体と固体がある。液体は霧や「もや」(一般に「霞み」と使われている)。固体は煙や粉塵で山火事や火山噴火で大量に放出され、気候変動や経済活動に影響を与える。