高層気象観測について述べてきました。大きな費用をかけて得た資料はどのように利用されているか見ることにしましょう。太平洋戦争終結後は、それまでの気象観測資料の軍事機密化は解除され、天気予報を一般に発表するようになりました。

昭和20年代は地上天気図のみで将来の天気図をイメージして予報していましたが、高層観測が充実して高層天気図が作られ、立体的に大気の動きを把握することが出来て、より緻密な天気変化をイメージできるようになりました。

決定的な欠点は予報官の過去の経験に頼っていたことです。これを改善するために複数の予報官により協議して作成するようになり、見解の相違でずいぶん揉めたこともありました。

1959年(昭和34年)に気象庁は電子計算機IBM704を導入し、数値天気予報を開始しました。初めは500hPaの予想図で、実用化の道は険しいものでしたが、コンピユータの性能向上と計算方式の改善が進み、現在は全ての予報に適用されています。地上気象観測データと高層観測データがあって数値天気予報は可能になりました。

さらに、気象衛星の観測資料や船舶からのデータも取り入れています。利用対象によって各種の計算が行われています。モデルとは、 数値予報の計算に用いるプログラムのことです。

【メソモデル】防災気象情報(注意報や警報)に用いる。範囲は二本周辺で解像度(※)は5km。予報期間は33時間まで。1日8回実行
【全球モデル】府県天気予報、台風予報、週間予報、分布予報、時系列予報。地球全体を解像度20km。予報期間は9日さきまで。1日4回実行。
【台風アンサンブル予報モデル】台風予報。地球全体を解像度60km。予報期間は5日間。1日4回実行。
【週間アンサンブル予報モデル】週間天気予報。地球全体を解像度60km。予報期間は9日間。1日1回実行。
【1か月アンサンブル予報モデル】1カ月予報や異常天候早期警戒情報。地球全体を解像度110km。予報期間は1カ月。週2回実行。
【3か月・暖寒気候期アンサンブル予報モデル】3カ月予報、暖寒候期(※)予報。地球全体を解像度180km。予報期間は7カ月。月1回実行。

高層観測データを直接利用しているのは航空機です。目的地までの風のデータにより、燃料が経済的に積載されています。

本年は地震や気象災害、それに伴う重大な事故がありました。来年はよい年になりますように。

※解像度
水平方向を5kmに区切り、それぞれの交点での物理量を計算するので、5km以上の現象が把握できる。さらに上空へ何層にも区切る。全球モデルでは上空へ60層に区切つている。
※暖寒候期
4月から9月を暖候期、10月から翌年3月までを寒候期としている。