降雨や降雪が予想される時によく使われる言葉は「上空の寒気」により・・・です。雨や雪が降る原因は上空の寒気によるものだけではありません。

正確に言いますと、上空の寒気により上昇気流が激しくなり、雲が出来て降水にいたるのです。上昇気流が起こるのは寒気の上に暖気が昇っていく「温暖前線」。暖気の下に寒気が潜り込む「寒冷前線」。潜熱(※1)の放出によるもの「熱帯低気圧」。日射により地面付近の空気が温められる時の「対流不安定」などです。

先月の竜巻は上空に時期はずれの寒気が入ったのが原因の一つとなっています。この表現は「定性的」と言い、寒気の強さを数値で表すのを「定量的」と言います。先月6日に発生した関東地方の竜巻はどのような強さの寒気によってもたらされたかを見てみました。

図1は館野(※2)の高層気象台の500hPa9時の観測データです。平年の値と2011年、2012年を比較しました。2012年5月は平年値-13.5℃に対し-15.1℃で1.6℃低くなっており、5日以降12日まで続いています(参考までに昨年の値は1.3℃高くなっています)。

図2は館野の日最高気温と500hPa気温の差です。竜巻の起こった前日は45.1℃、6日は44.9℃で500hPaと地上の温度差が大きく、強い対流不安定が起こる要素が揃っています。

上層と下層の気温の比較だけではなく、下層の湿りが大きいほど上昇気流は強くなります。熱帯の海洋面は強い日射を受けますが、地上に比べて水面温度は30℃を超す事はありません。大量の水蒸気があり潜熱の放出により強い上昇気流が生まれ、クラスター(※3)が集まって熱帯低気圧になります。対象的なのは砂漠です。下層が温められ強い上昇気流が出来ても水蒸気が少ないために雲はできません。

※1 空気中の水蒸気が飽和して水に変わるときに放出する熱。
※2 1920年茨城県館野に国の最初の研究機関として高層気象台が設置され、日本における高層観測の指導的な役割を果たしている。1968年から1980年にかけて国の各研究機関や大学が移転して現在の筑波研究学園都市となる。
※3 花などの房・束ねるの意味。気象では数個以上の積乱雲がかたまって発達したものを言う。熱帯低気圧の卵。