11月5日の本紙は「万里の長城ツアー」に参加者した日本人3名が、1960年以来の大雪と寒さで死亡したと報じました。またテレビニユースでは「寒冷低気圧」(※1)による大雪と報道しました。

当時の気象状況を天気図で見ますと、2日12時(UTC)(※2)の500hPa(高度5500m)では、深い気圧の谷に伴い、マスナス30℃の寒気が北極圏からバイカル湖をへて北緯40度まで南下しており、3日には切り離された寒冷渦になりました。同時刻の850hPa(高度1500m)は、張家口付近は気圧の谷の前面で南から暖かい空気が流れ込み、11.2℃まで気温が上がっています、

それから12時間後は急速に気温が下降してマイナス5.5℃に更に12時間後はマイナス11.3℃と、実に24時間で22.5℃の気温下降です。また、4日になりますと850hPaの気温が7000hPaの気温よりも低くなっており、下層の冷え込みが強いことを示しています。

我が目を疑うほどで50数年の経験では記憶にありません。このように激変する天候はさまざまな災害を起こします。的確な予報とそれの正しい利用で災害を未然に防がなければなりません。

図は遭難現場に近い張家口と北京、呼和浩特ならびに波線で万里の長城をあらわしたものです。

グラフは内モンゴル自治区の呼和浩特(Huhehot、フフホト)観測所の11月1日から4日までの高層気温変化図(※3)です。X軸は日と時間(UTC)です。呼和浩特は張家口の西方約280kmに位置し高層観測所があります。

(※1)寒冷低気圧  寒冷渦(Cold vortex)。 上層に現れる発達した長波の谷から切り離される寒冷型の低気圧。寒冷渦は積雲性の雲の発生を伴い大雨や大雪が降りやすい。日本海側の豪雪は寒冷渦と大きな関連がある。

(※2)UTC 協定世界時 経度0度(イングランドグリニッヂ)を中心に経度約15度ごとに時間を振り分ける。UTCを使うのは世界が同時刻に観測するためです。日本は東経135度が日本時間で、UTC0時は日本時間午前9時になります。中国北京は時差1時間で午前8時です。

(※3)高層気温変化図  気温は気象庁がインターネットで配信している高層天気図から読みとりました。