櫻井美紀先生

◆図書館でのこと

何年か前のことです。調べものがあって近くの図書館に行きました。

その図書館には、小さい子のための読書コーナーとしてたくさんの児童図書に囲まれて、子ども用の机と椅子が置かれているコーナーがあります。その机に座って調べ物の本に目を通していました。すると、どこからか小さくはない大人の声で本を読む声が聞こえてきました。

その日は、そのコーナーの辺りには人の姿はなく机に座っていたのは私だけの静かな日だったのです。不思議な思いで辺りを見回し、後ろを振り向くと、そのコーナーからちょっと離れた本棚の近くから本を読む声が聞こえてくるのです。どうして声を出して本を読んでいるのだろうかとちょっと異様な思いにも駆られ、更によく見てみると、しゃがんでしきりに本を読んでいる人の姿が見えてきました。近くに乳母車もあるようです。

よめました!赤ちゃんの姿までは見えませんでしたが、その乳母車にはその人の赤ちゃんが乗っていたのでしょう。そしてその赤ちゃんに読み聞かせをしていたのでしょう。

以前にも図書館で同じような光景に出会ったことがありました。そのときには、私の間近でお母さんが乳母車の中の赤ちゃんに読み聞かせしていたのです。すぐ近くでしたので6カ月くらいのお子さんだったでしょうか。元気なお子さんの顔も見え、その状況も手に取るように理解できたのです。あとでそのお母さんともお話ができたように思います。

その日はきっと図書館で‘ブックスタート’と称されている赤ちゃんからの本の読み聞かせでも行われていたのかもしれません。

◆ 福井の図書館でのおはなし会

櫻井美紀先生や「語り」について考えているといろいろなことが思い起こされてくるのです。

そういえば櫻井先生を福井市のみどり図書館や春江の図書館にご案内したことも思い出されてきました。語りや、講演をしていただくためにご案内したとおもうのです。

冬の寒いときだったと思います。ミンクでしたでしょうか黒い毛皮の帽子をかぶってこられたのです。その帽子について福井という土地にあってご自分で何かを感じられてのことだったのでしょうか。ご自分のお爺様?がロシアの外交官であったこと。そのお爺様にお土産にいただいた帽子であることなど帽子についての説明から、先生のご家族についてのお話を伺いながらみどり図書館までの道を歩いたことが思い出されてきたのです。

やさしく落ち着いた雰囲気のなかにも西洋の華やぎを持たれた、長身で上品な櫻井先生が身につけられますと辺りの空気も少し華やいでいたのだとおもいます。ただ寒い中どうしてそこまで歩いていただいたのかはわからないのですが。

平成4年8月に開館した、みどり図書館の開所当初「図書館の夢を語る会」なども立ちあがっていた時のことです。私たちはその会には所属はしておりませんでしたが、こうした機会に私たちにも私たちの立場でなにかできることがあればさせていただきたいという思いもありました。保育園では園児に昔話などの童話を毎日簡単な人形を使ってしておりました。それで ‘お話し(かたりとしての)’の大切さを少しでも多くのお子さんに分かちあうことができればという思いから、保母(保育士)さんたちが保育園でやっているお話を図書館でボランティアでさせていただきますのでやらせていただけませんかとお願いに行ったことがありました。そのときは「外部からのボランティアを受け入れると司書がやらなくなるので・・・」というお断りのご返事でしたが、平成7年5月に開館した春江図書館の開館の折には、設立に尽力された元東安居小学校の校長先生の故山田敏文先生にもお願いにあがったのです。

山田先生は校長先生として私たちの園にも行事の折ごとにおいでいただき、保育内容についてとても関心を持っていただいておりました。そういう関係から私自身も学校に何度か先生をお訪ねする機会もあり、学校にお邪魔してお話させていただいたことも思いだされてきたのです。「春江の図書館ができるときにはできましたらそこで子どもたちにお話を語り聞かせる‘おはなし会’のある図書館にしていただきたい」ということを。そして「もし子どもたちに‘おはなしをする(語る)人’がいなければ保育園の職員が協力させていただくつもりです」ということを。しかし、私が頼むまでもなく文学の世界に造詣の深い先生でおられましたのでそのようなことは既に充分に心積もりされておられたのではなかったかとおもいます。が、とても謙虚でおられた先生は二つ返事で快くすべてを承諾してくださったのです。

春江図書館が開館してから月に一度ぐらいだったと思いますが、私たちの保育園の保育士が交代で簡単な人形を持って確か「小さな子のお話し会」と名づけていただいたお話会に出向いておりました。

私たちの保育園の「親育ちの講座」に来られていたお母さんたちが、子どもたちへの人形を使ってのお話も学ばれ、後には職員に代わって3年ぐらいはお話し会に通わせていただいていたのではないかと思います。今でも春江の図書館や県立図書館では福井の「語りの会」の有志の方によって「子どもたちへの語りの会」が継続して行われているとのことです。

車を走らせながら何気なく付けていたラジオから流れてきた‘「小さなおはなし会」のお知らせ’を耳にしたこともありました。この日の放送によればこの「小さなおはなしの会」はお母さん方にはとても好評でこの日をとても楽しみにしていてくださっているということでした。図書館がこの「おはなし会」をラジオでまでもお知らせくださっていることや、皆さんがその‘おはなし会’をとても楽しみにしてくださっていることをうれしく聞かせていただいたものでした。

そんな春江図書館での‘おはなしの会’を櫻井先生にご案内して見ていただいたこともあるのです。(平成10年11月頃のことだそうです)こうした櫻井先生を春江図書館にご紹介したことがきっかけとなって、その後も何度か櫻井先生は春江の方に足を運ばれ「語り」や「講演」をされたということを、先日、当時春江図書館員だった方からお聞きすることができたのです。

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