センバツ出場が決まった選手たちに声を掛ける福井工大福井の安久部長(右)=27日、福井市角折町の金井学園室内練習場

 大舞台で選手を支えたい—。第89回選抜高校野球大会の出場が決まった福井工大福井の部長を務めるのは、ことし就任5年目を迎えた安久洋子さん(55)。福井県内の高校の野球部では唯一の女性部長だ。野球経験はないが「選手が存分に力を発揮できるように」とベンチから熱いエールを送り、ナインの背中を押している。

 2012年の秋、部長に就いた。音楽教諭を務め、それまではバトン部の顧問として甲子園のアルプス席から選手たちを純粋に応援する立場。部長に就くとは「想像もしていなかった」。

 当初は「自分は何をしたら選手、チームのためになるのか」「自分ではダメなんじゃないか」と悩んだ時期があった。野球経験がないため、ノックなどできないのは当然。「自分にやれることをやっていこう」と開き直った。時間ができればグラウンドに足を運び、練習試合では、音楽教諭ならではの「声」を生かして“ウグイス嬢”を引き受けた。選手の良いところを見つけるよう努めた。

 「深呼吸してみよっか」。今ではベンチで、公式戦を前に表情に硬さが見られる選手にこう声を掛け、緊張をほぐす。また、選手の体を大きくするための「食トレ」にも熱心だ。土日には6〜8升の米を炊き、まぜご飯などにして振る舞う。「元気よく『いただきます! おいしかったです!』と言ってご飯を食べ、また練習に戻っていく姿を見ると、もっと頑張らなきゃと思えるんです」

 そんな部長を選手たちは「公式戦の時は、選手以上に熱い。力をもらっている」と話す。北川智也主将は「監督、コーチに言いづらいことも部長には話せる。精神的に支えてもらってる」。細やかな気配りが絆を強めている。

 昨年は部長として初めての甲子園だった。緊張や興奮があったといい「いつものように声掛けができなかった」。今回は2度目の甲子園。「毎年、思いは一緒なんだけど、一つでも彼ららしい野球ができて、一つでも多く勝ってほしい」。柔らかい笑顔で選手たちを励ます姿が春の聖地で見られそうだ。

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