前回【“生かされている命”に向き合う そしてその育み(11上・11下)】で、治療教育家・脇坂安郎氏から送られている≪星を求める子どもたち≫の文章の一部をご紹介させていただきました。このお送りくださった文章は、私が‘うんちく’のコラムで「治療教育」について少し触れさせていただくにあたって何か役に立てればという深いご配慮で送られてきた文章です。しかし、拝読して今の時代の教育を考える上で、これは是非に皆さんと共有すべき文章であると思われました。その内容のすべてを紹介してほしいという要望もいただきました。脇坂氏にその旨お伝えしたところ、全文紹介を快諾いただきましたので引き続きご紹介させていただきたいと思います。

内容的にはシュタイナーの思想(アントロポゾフイ=人智学)に基づいて展開されている治療教育について述べられているものですので、こうした人間観、世界観にあまり馴染みのない方にはなじみのない言葉などがあって、理解する上で困難のところもあるかと思いますが、そうした仔細にはとらわれずに最後まで読み通していただければと願います。

そしてできればシュタイナーの人間観、世界観を、よりよく理解するためにこれまでなされてきている数多くの講演やその講演録などに基づいて、機会を改めてご一緒に考えていくことができればとも思っております。

× × ×

2.シュタイナー治療教育をどう学ぶか

この意味で、シュタイナー治療教育は、アントロポゾフィーと呼ばれる、人間と宇宙についての見方に、根本的に基づいています。

したがって第1に、シュタイナーが指し示したアントロポゾフィーを学びつつ、第2にシュタイナー教育の現場を深く尊重し、第3に他の治療教育一般の考え方を理解し、第4にその上に立って、シュタイナー治療教育固有の観点を体験するように努めることが大切になってきます。

その最後の観点については、シュタイナーが残した唯一の体系的な講義録「治療教育講義」を繰り返し読み込むことによって、深められ展開されてきました。ゲーテアヌムで行われ続けている治療教育者国際会議でも、くり返しこの講義が取り上げられています。

今からこの観点の、ひとつの代表的なモデルを枠組みにして、シュタイナー治療教育という遥かな道のりへの、ささやかな道案内を試みたいと思います。

これらはあくまでも活字という媒体手段を通してのおおまかなデッサンにしか過ぎません。真実が、私たちひとり一人のたゆまぬ実践を通して、体験の中に、姿を垣間見せてくれることを願うものです。

子どもと共に生きることがどれほど大切かを、そのまま数字で語る治療教育者養成セミナーのカリキュラムがあります。ゲーテアヌム治療教育セクション代表のグリム博士からいただいたそれを、参考のため一部掲げることは許されることでしょう。ご覧になれば、ハウス、学校、セラピーの場での、子どもとともに生きる時間がどれほど多いことか、わかっていただけるでしょう。子どもとともに生活し、 学びかつ実践することの中に、シュタイナー治療教育の生命が生きいきと脈動するのです。

※治療教育者養成コース(キャンプヒルヴァージョン)の抜粋
1. 正式授業   
        (1年目)  (2年目)  (3年目)   
中心課題  150時間  141時間 115時間
個別指導   36時間   36時間  36時間
授方法とセラピー研究
  0時間   36時間  36時間
ブロックコースとワークショップ
      50時間   50時間  50時間
追加講義   15時間   15時間  15時間
(合計)    251時間  278時間 252時間        

1. 補足授業                                    
カレッジミーティングとクリニックミーティング
  8時間   8時間   12時間
グループアセスメント
   6時間   6時間    6時間         
会議       0時間   0時間   20時間   
チュートリアル
10時間  10時間   10時間        
(合計)    24時間  24時間   48時間        

1.子どものケア                               
ハウス  1908時間1656時間 1440時間        
学校およびセラピー
396時間  648時間  864時間 
(合計)  2304時間 2304時間 2304時間            
    
※正式授業における中心課題 
1.一般人間学周辺    29+39+6=74時間             
2.心理学          10+24+0=34時間             
3.治療教育における診断学 30+7+51=88時間
4.教育学             6+21+0=27時間
5.治療教育におけるセラピー 6+5+20=31時間
6.子どものケア         11+0+0=11時間
7.芸術              58+45+26=129時間
8.保養学習           0+0+12=12時間
  合計              406時間

※中心課題の主な内容 
                                
世界の進化、人類の進化と人間の意識の進化、三層構造と四つの要素、十二感覚、七つの生命プロセス、発生学、子どもの発達、人のバイオグラフィー的発達、カルマと輪廻転生、心理学への治療教育的アプローチ、四つの気質、メタモルフォーゼ、チャイルドスタディ(子どもの観察)、治療教育への導入、「治療教育講義」の連続学習、診断学の進んだ学習、治療教育の歴史、ヴァルドルフカリキュラム、レメディアルエデュケーション、エクストラレッスン、童話・物語の技法、セラピーの実際、子どものケア、チャイルドプロテクション、栄養学、オイリュトミー、ライア演奏、ミュージック、ペインティング、フォルメン、クレイモデリング、ウッドカーヴィング、スピーチ、クラフト、人形作り、射影幾何学、ブラックアンドホワイトドロウイング、黒板画、ソーシャルペインティング、ジム、スペーシャルダイナミック、ゲーム  

                                       
ここにご紹介した治療教育者養成コースの内容を、そのまますべて実現することは、いまの日本ではできないことです。 

かつて2005年から2008年までの間に、バーバラ・ボルドウィン氏を招いて行った、8回にわたる4泊5日の治療教育者養成講座では、これらのうちのどれをどのような形で編成することができるか、氏と協議し続けました。日本の文化的風土や、人的・物的資源、時間的経済的制約の中で、みなさんといっしょに可能な最善を模索し続けました。そしてこのコースが最終的に、グリム博士によって、ゲーテアヌム治療教育セクションのサポートを受けるに至ったことは、うれしいことです。
この中で、子どもといっしょに生活し、ともに生きる時間について、いま私たちはどうすることができるかを考えなければなりません。それぞれの方々が、自分に与えられた環境の中で、ご自分の子どもを含めて、健常であるかないかを問わず、こころを込めてそのような営みを持っていただけることができるのです。なぜなら、すべての人たちの中に、障碍の要素が普遍的なものとして、奥深く横たわって
“本来発育が不十分な子どもたちに起こることのすべては、もっと内密な仕方ではあっても、健常と思われている魂のいとなみの中にも見られることばかりだからです(p8)。”

さらに、治療教育を学ぼうとするものは、

“いわゆる健常な子どもの教育をあらかじめ実際に深く学んでいなければなりません(p8)。”

として、一般教育の大切さを指摘しています。

近い将来、それがインクルーシブな形であれ、養護支援学級というかたちであれ、スペシャルニーズの子どもたちとの素晴らしい出会いと関わりをもつことが出来るように、いま出来ることをしっかり行って、自分たち自身の準備をすることが大切です。

これからの道案内は、これらの指標の中の重要なものを順を追って採りあげ、講義、エクササイズ、芸術活動などの調和の中で、少しずつ腑に落として行きたいものです。
 
いちばん初めに、シュタイナー治療教育の全体の姿を鳥瞰し、次に進むべき道を、ごいっしょに考えてみたいと思います。 

近い将来、それがインクルーシブな形であれ、養護支援学級というかたちであれ、スペシャルニーズの子どもたちとの素晴らしい出会いと関わりをもつことが出来るように、いま出来ることをしっかり行って、自分たち自身の準備をすることが大切です。

これからの道案内は、これらの指標の中の重要なものを順を追って採りあげ、講義、エクササイズ、芸術活動などの調和の中で、少しずつ腑に落として行きたいものです。
 
いちばん初めに、シュタイナー治療教育の全体の姿を鳥瞰し、次に進むべき道を、ごいっしょに考えてみたいと思います。 そして、これから先の私たちのお話しの中では、「治療教育講義」を常にひも解きますから、お持ちいただければ便利かと思います。私は、ちくま学芸文庫を持ち歩いています。