◆梅の効用

10キロばかりの青々とした大粒の実に立派な梅の実が届きました。山からもいできてまだ葉が混じったままの‘紅さし’という種類なのでしょうか。ほんのりと赤みがさした種類のようです。例年のごとく寺の山からもいで届けてくれたのです。

先日、これまた大きな買い物袋にいっぱいの、たくさんの寺の庭になった山椒の葉や実を冷凍保存するなどやっとなんとか始末したところなのです。

こんなにたくさんの梅の始末が今の私にできるだろうか。ちょっと不安がよぎりました。どなたか欲しい方があれば分けてあげたい。正直そう思って心当たりを思い巡らしてみました。しかし、このままでは人にもらってもらうこともできないでしょう。先ずは、やるしかない。とにかくこんな時はいつものように、できると思えることから手を付けることです。袋を空けて出してみると大きさも種類もいろいろのようでした。

まず、粒の大きさ別に選り分けることから始めました。とりあえず特別大きいものは梅干しに。小さくて青いのは、梅シロップに。後は、塩をして梅酢用にしておけばなんとか始末ができるだろう。その状態でほしい人があればまた分けてあげればよい。そんな思いで作業に取り掛かっているうちに、梅シロップ用2瓶。梅干し用2甕。梅の醤油漬けもあるそうで1瓶。残りはすべて、梅酢様にと塩をして何とか始末ができました。

もう7月も半ば過ぎ、太陽の光を反射してキラキラ光りながら風に揺れている自生えの赤紫蘇の葉を畑で沢山摘んできて塩漬けの梅に入れました。

「本当のものは長い歴史の中にも消える事なく残されてゆきます。日本民族の生活の中に深くとけこんで生きてきたもの、それこそ本物だと思います。梅干しやたくわん・みそ・しょうゆのすばらしさは日本民族と共に日本の風土の中にとけこみ、日本人と共に育ってまいりました。しかしこれ等のすばらしい食品も食品加工の変化と共に、本ものは少なくなり、よけいな化学薬品や食品添加物、色素等で汚されてしまいました。健康法ブームと共に、これ等の本物をほしいという声も多くなった事は、それを願ってきた私共にとって喜ばしい事です。これらは健康づくりには重要な食品です。…ところがこの頃の人は、昔の本当の梅干しを知らない。塩を減らして化学調味料で味付けして防腐した梅干が、梅干しの味だと思っているので、塩からいものは売れない。そこで一般の好みにあうように味付けした梅干が売り出されるわけです。・・・」と『家庭の味 手作り食品 』に「あなたと健康社」の主幹であられる東城百合子先生が書いておられます。

食生活や、文明の利器が日常生活の末端に至るまでいきわたっている今日の経済優先の私たちの暮らしにおいてその便利さのつけとしてその陰にあって、私たちの健康に及ぼすその影響が顕著になってきているようです。そうした状況に対して病気における専門家であるお医者さんたちまでが、その著作や講演を通してさまざまな立場から、“病気に対する究極的な薬は、病院から出される薬ではなく、自然な食品にある”とさえ言われるようにもなってきているのです

ちなみに梅は、梅干しに始まり、梅シロップ、梅酒、梅ジャムなどはそれでも今日においてもよく家庭で作られているとおもいます。そして梅の使われ方も、梅から出た白梅酢、梅干しを作るときにできる紫蘇によって赤くなった赤梅酢。梅ペースト、梅肉エキス、梅天神、梅姜番茶、梅干しの黒焼き、等々とあまり一般には知られていない奥深い梅の使われ方もあって目立たないながらにもしっかりと私たちの健康を支えてきているのです。

その自然界からの賜り物である梅の効用(薬効)は、現在の栄養学、科学によって解明されている以上のものであって、計り知れないというのです。そうした食品について関心のある方は本県出身である石塚左玄に端を発するマクロビオテックやその流れをくむ様々な食養生に関する本を参考になさって実践され、ご自分の体でその効能や薬効を体験なさってみてください。そして、もうそろそろ目先の自分たちの利潤追求により、子どもや私たちの健康が脅かされるような経済優先社会ではなく、第一に私たちの健康が守られ安心して暮らせる経済社会となってほしいと心から願わずにはいられないのです。

参考までに、上記『手作り食品』に加え、私自身が保育園の園児たちの為に、あるいは、私の家族や私自身の為に長年大切に参考にさせていただき、活用させていただいてきている『自然療法』(東城百合子著―あなたと健康社)は小さいお子さんがおられるご家庭では是非一冊そろえて置かれると身近なことでいざというときにとても助けになる本だと思います。著者の東城百合子先生やその料理教室の主任さんである米沢佐枝子先生には、私たちの寺や保育園でも講演をしていただいたり、実習していただいたりと長年お世話になってきているのです。

またマクロビオテックの大森一慧さんの書かれた最近出会った本で『いちばんやさしい!マクロビオテック おいしいれしぴ98 』も基本的なことがしっかりと押さえられながら時代の流れからか若いお母さん方に寄り添った、とても読みやすく、わかりやすく、そして細やかな配慮が随所になされているおすすめ本です。

私たちの日常の生活のなかであまり目立たない存在ではありますが、しかし、基本的存在としてその重要な役割を果たして私たちの健康を支えてきている、こうした梅干し、味噌、たくあん、醤油、そして麹などを代表とする昔から伝えられてきていた日本の伝統的食品の存在は、子どもの育ちにおいてまだその存在はあまり一般には、意識されていないながら重要な役割を果たしているシュタイナー教育における、人間の構成要素である、肉体、エーテル体、アストラル体、自我の在りようとも何か共通しているように思われるのです。

子どもの教育を考えるとき、これらの人間の構成要素は、日本の昔の子育てにおいても、教育学的に取り立てて意識されて取り組まれていたわけではなかったと思うのですが、子育ての知恵として子どもの成長のありようをきちんと踏まえてなされてきていたように思われます。

しかし、物質優先の時代にあって、子どもの教育においても時代の流れの中で物質的現実生活に適応することが優先され、子どもの成長に即するというよりも成長の法則の先取りが当たり前のこととしてなされている今日の教育事情にも共通しているようにも思えるのです。

◆人間の四つの本性(構成要素)

「成長しつつある子どもの教育を問題にするときは、人間の隠された本性そのものの考察から出発しなければならない」(『シュタイナーコレクション 1 子どもの教育』)

‘もう何度も聞いているのでそのことに関しては話さなくてもよいでしょう’とお弟子さんたちから言われたというくらい、シュタイナーは、この「人間の隠された本性=人間の構成要素」について、至る所で必ず繰り返し、繰り返し、話されていることでもあるのだというのです。

これまで何度かこの構成要素についてもご紹介してきておりますが、シュタイナー教育に関する本を読むたびに、いつも‘こんなことまでもが書かれていたのだ’という新たな思いで読ませていただくことが多いのです。それらの本をどこまで深く読み取り、腑に落ちて理解することができるかということは、それまでの子どもの教育や、育ちにどれだけ深くかかわってきているかということはもちろんのことなのですが、さらに、書かれてある内容にどれだけ必然に迫られて、真剣に向き合っているのかによってもそれらの本を読み取る深さが違ってくるということをいつもまざまざと思い知らされているのです。

そうしたなかで重要と思われながら、まだまだご紹介できていないこともたくさんあり、機会があればいつか是非にご紹介したいと思ってきていることも多いのです。ここでは補足的、まとめ的意味からその一端ではありますが改めてご紹介したいと思います。さらに関心のある方は是非そうした文献をご自分で読んで深めていっていただきたいと思うのです。

<肉体>
これまでも見てきましたように7歳までの子どもの成長において一番大事なことは、その肉体形成にあるということでした。

私たちは一般に肉体=物質体と考えがちですが、肉体=物質体ではないというのです。
シュタイナーは人間の肉体とは、物質体とエーテル体(生命体)とで成り立っていると考えているというのです。肉体は物質から成り立っているのですが、すべてが物質で成り立っていれば、様々な物質の法則の働きによって究極的には分解、崩壊してしまうはずなのですが、そうした物質の法則に逆らって植物のように、私たちの体内の物質的な力、例えば引力の法則に逆らって上に向かって伸びようとする反物質的な在りように変えているのが、私たちの中のエーテル的な力・エーテル体だといわれています。

「シュタイナー教育」の最も核心的な内容を凝縮した形で書かれているという『シュタイナーコレクション1 子どもの教育』(あるいは『霊学の観点からの子どもの教育』)によれば、 
「子どもが得た最初のからだは、遺伝によって得たからだです。そのからだは、いわば父と母の協働の働きの産物として、地球の物質成分から作り出されました。しかし、そもそもからだとは、一体何なのでしょうか。からだは、地球が人間を深化させるために、人間に与えたモデルなのです。・・・そして胎児のときに、父と母によって私たちに与えられた物質的な遺伝成分が、高次の世界から降りてきた霊的=魂な本性と一つに結ばれました。霊的=魂的な人間が、遺伝の流れに由来する体を捉えます。その体は人間のモデルでした。そして今、歯の生え変わるとき、このモデルとしての遺伝体が外へ押し出され、全く新しいからだが形作られます。ですから、生まれてから歯が生え代わるまでの子どもの場合、霊界から地上にもたらされたものと、大地から受け取った素材=成分との共同作用の成果が、もっぱら遺伝によって与えられたモデルのからだに働きかけていました。そして歯が生え変わるとともに、遺伝体のモデルに次いで、第二のからだが作り上げられます。この第二のからだは、人間の霊的=魂的本性の産物なのです。」

もっとも目立った仕方で生じる歯の生え変わりと同じ過程が、本来、全身に生じているのだというのです。爪や髪を切ったり、表皮が垢となってはげ落ちたりするように、体の成分が表面で引きはがされ、内側から押し出されるのだというのです。そのように、誕生時のからだは、一番堅い部分である乳歯が外に押し出されるように、親から遺伝された体を、次第に外へ押し出して、新しい体に作り変えられるというのです。その遺伝という働きは歯の生え変わりということで完結するというのです。

そして肉体が一つの成長をとげると、それまで肉体形成に使われていたエーテル体生命(生命体)は身体の力から、魂の力に変化して子どもの内面性の発達に使われるようになり、小学校に入って学習するという内的な条件ができたということになるのだというのです。

歯が生え変わったとき、それまでのからだの奥深くに潜んでいた力が、感覚とは異なる「感情の力」となって表れるというのです。親や周囲の環境に帰依して、環境と一つになっているこの時期の子どもの魂にとってそれまで最も重要であると考えられてきた「模倣の原則」は、全身で環境に帰依する代わりに、感情となって、他者の魂に向き合い、自分の魂の力で他者の魂に帰依する=先生の言うことに従うという、いわゆる「権威」が、子どもの魂にとって基本原則とし必要になってくるというのです。

そして『シュタイナー教育を語る』によると ‘幼児期は意志力(魂の一番無意識的な部分)、内的な衝動の力を発達させる時期’‘学童期は感情(無意識的な部分と意識的な部分の中間にあって半ば眠り、半ば目覚めていて、夢にあたる部分で両者の橋渡しをする)を豊かに体験できるような教育環境の中で感情を発達させる時期’‘それからさらに13,4歳あたりから本来の思考力、知性を発達させる時期’という風に大まかに基本的な子どもの発達過程を見ることができるのだというのです。この時期に感情を思う存分発揮できた子どもは、記憶力を力強く発達させることができ、感情を自分なりに納得できるように体験できた子どもは、社会に対して積極的に参加する意欲をもつようになるというのです。

関連記事
あわせて読みたい