第90回全国高校野球選手権記念大会第7日は8日、1、2回戦計4試合を行い、1回戦第2試合で本県代表の福井商は6―1で酒田南(山形)に快勝した。夏の大会の初戦突破は2年ぶり。
福井商は初回、宇原の中前打で2点を先制。1点差に追い上げられた八回にスクイズで加点。九回には河合の2点適時左前打などで3点を加え、突き放した。
投げては主戦竹沢佳が六回一死までノーヒットに抑える上々の立ち上がり。好守もあり、被安打5、失点1で危なげなく完投した。
北野尚文監督は、この日の勝利で甲子園通算30勝を達成した。
夏の高校野球1回戦で酒田南(山形)に快勝し、アルプススタンドに向け笑顔で駆け出す福井商ナイン=8日、甲子園球場
▽1回戦
福井商(福井)200000013|6
酒田南(山形)000001000|1
【評】福井商が初回の先制と、中盤の好守、終盤の追加点と攻守がかみ合い、好投手を擁する酒田南に快勝した。
初回、酒田南の先発左腕安井から連続三振を奪われたが、3番松永が10球粘って四球、4番中村も8球目を深い守りの外野陣の前に落とす右前二塁打で二死二、三塁とし、宇原の中前打で2点を先制した。
守っては六回裏に二塁打と暴投で一死三塁とされ、内野ゴロの間に1点を返されたが、七回裏一死二塁からの安井の中前打で本塁突入を狙った二走を、中堅荒川―三塁野路―捕手中村の中継プレーで補殺し同点を阻止した。
直後の八回に無死二、三塁から、松田がスクイズを決めて再び2点差としたのが大きかった。九回にも二死二、三塁で、河合が2番手小山から2点左前打を放つなどして3点を加え、突き放した。
主戦竹沢佳は、酒田南の主戦安井との2年生左腕対決を制した。130キロ前半ながら伸びのある直球に、緩いカーブやひざ元へのスライダーを決め、六回一死までノーヒットピッチング。被安打5、失点1にまとめ、完投した。
(近藤洋)
○…福井商ー酒田南…○ 7回裏酒田南1死二塁、安井の中前打で二走奥野が本塁を突いたが、福井商の中堅手荒川、三塁手野路とつないだ返球で捕手中村がタッチアウトにする=甲子園
福井商が好守と1点にこだわった攻撃で、終盤までの息詰まる展開を制し、勝利を呼び込んだ。
好守といえば、六回に1点を返され嫌なムードが漂い始めた七回裏一死二塁で中前にはじき返された場面。やや後ろに守っていた荒川から三塁手野路、捕手中村へとつないだ返球は”ストライク”。同点を狙い本塁突入を図る二走を鮮やかに補殺した。
荒川は「いつも練習していること、カットマンに野路が入ると思って投げた」。荒川の思い描いた通りに入った野路も「いい球が来た。絶対アウトにせなあかん」とつないだ。「完ぺきだった」と声をそろえるプレーが、試合の流れを福井商に引き寄せた。北野監督も「練習の成果を発揮してくれた」と手放しで喜んだ。
直後の八回には福井商らしいスクイズ。無死二、三塁から主将松田。「打て」のサインが繰り返し出され誰もが強攻と思っていたが、カウント1―3で突然、「スクイズ」のサイン。「スクイズは本来難しいものだが、選手がやりやすい、いいカウントをつくってくれたから」と北野監督が振り返ったプレーは、見事的中。指揮官が「どうしてもほしかった」という大きな1点になった。
基本を積み重ねた守備に、要所での決定的なスクイズ。好投手安井をはじめ、大阪など山形県外から選手が集った精鋭チーム酒田南に対し、「スターなきスターチーム」の福井商。基本プレーに徹する福商野球の真骨頂を存分に見せつけた。(近藤洋)
酒田南打線を5安打に抑え完投した福井商のエース竹沢佳
福井商の2年生エース竹沢佳が被安打5、失点1で完投。六回一死までノーヒットピッチングの快投だった。
セットポジションから、ゆったりとしたフォームで多彩な球種を投げ込んだ。185センチの長身で腕も長いうえに、意識して球持ちを良くすることで、スピード以上に打者には打ちにくいようだ。
加えて「全く緊張せずに投げられました」という強心臓。甲子園のマウンドは「投げやすいし、小さいころからここで投げたかった。楽しめた」と笑みがこぼれた。
スピードよりも球の伸びにこだわってきた。「今日は直球がしっかり伸びていた」。緩いカーブやひざ元へのスライダーも決まっていたが、「この日1番の球」には直球を挙げた。
「相手投手には負けたくない」と、前評判の高い同じ2年生左腕の安井に、並々ならぬ闘争心。球速で上回る相手に投げ勝ったことで「球の伸び」の大切さを実証した。
「(捕手の)中村さんが、僕の投げたいボールのサインを出してくれた」と息もぴったり。県大会の背番号10から甲子園の勝利投手と、一戦一戦強くなる左腕から目が離せない。
1回表福井商2死二、三塁、宇原が中前に先制の2点適時打を放つ
「キーン」。胸のすくような快音が甲子園に響いた。初回二死二、三塁から5番宇原が鮮やかなセンター返し。先制の2点適時打で流れを引き寄せた。
試合前、「いい緊張」と話していた宇原。初回、いきなり好機が巡ってきた。出番直前まで「(心臓が)バクバク状態だった」というが、打席に立った瞬間「全然緊張がなくなった。ボールも見えた」。振り抜いたバットは「快音が広がって、初めての感覚だった」という会心の一打だった。
「相手投手の切れのあるボールを見たときは、点が取れるのかと思った」と北野監督。事実、1、2番が連続三振に倒れ、4番中村の二塁打も、深く守っていた外野陣の前に落ちるラッキーな当たり。それだけに、値千金の一打だった。
六回の中飛もしっかりととらえた当たり。九回には外から入ってくるスライダーを左翼線へ運ぶ二塁打を放ち、この日2安打2打点と絶好調。
北野監督のアドバイスで打撃フォームを改善、県大会1週間前の練習試合で大当たりし、背番号12で5番レギュラーをつかんだ”遅れてきた男”。次戦の伝統校・仙台育英戦に向けては「全力プレーで倒したい」と言い切った。
北野監督 甲子園30勝
「河合がウイニングボールをくれたんですよ」。お立ち台で北野監督が、少し照れくさそうにボールを出した。この日の勝利で同監督は甲子園通算30勝を達成。福井商を率いて通算35回甲子園に出場し戦績は30勝34敗、夏は16勝17敗となった。
北野監督は1968年、福井商へ赴任し野球部監督に就任。71年センバツで甲子園に初出場、翌72年のセンバツで初勝利を挙げた。主な成績は78年センバツ準優勝、96年夏の甲子園4強、02年センバツ4強など。
選手たちも監督の30勝を意識していたようで、河合は「ここまでこれたのは監督さんのおかげ。感謝の気持ちを込めて渡したかった。最後は僕のところに飛んでこいと思った」と笑顔。北野監督は「甲子園で1勝挙げるのは大変なこと。選手も一生懸命努力している。選手と支えてくれた人に感謝したい。幸せです」とかみしめるように話した。
「完ぺきな試合だ」
福井商 初戦突破
大応援団 沸き立つ
8回表、待望の追加点に沸き返るアルプススタンド=8日、甲子園球場
初回に先制、終盤に効果的な追加点を挙げて追撃を振り切った福井商の試合運びに、1塁側アルプススタンドを埋めた約2000人は沸きに沸いた。奮闘を見せるナインに負けじと、一投一打に力の限りの声援を送り続けた大応援団。最後の打者を打ち取った瞬間、ボルテージは最高潮に。「完ぺきな試合だ」「次の仙台育英戦も頼んだぞ」―。2回戦への期待を込め、選手の奮闘ぶりをたたえていた。
盛り上がりはいきなり初回から。二死二、三塁から宇原選手が先制タイムリーを放つと、応援団は一気に高揚した。父雅弘さん(43)は「前の2人が粘ってくれた後で、きっちり仕事をしてくれた」と、父母の会メンバーから手荒い祝福を受けつつ、ほくほく顔。
その後は2年生左腕同士の投げ合いで、引き締まった試合展開が続いた。昨夏の甲子園にエースとして出場した山田雄平さん(19)は、OB約20人とともに最前列で観戦。力投を見せる竹沢投手に「入学してきた時、おもしろい素材だなと思っていた。疲れてきても、うまく抑えている。同じ2年生相手、絶対に投げ勝って」とエールを送った。
六回には、中村捕手がライト前に力強い当たりを放ち出塁した。母有紀さん(39)は「1本目はポテンヒットですっきりしなかったけど、2本目もまだまだ。もっと打ってほしい」と話していた。
1点差に迫られた後の七回裏、一死二塁のピンチを迎えスタンドは重苦しい雰囲気に包まれた。ところが、ヒットで本塁を狙ったランナーを中堅荒川選手、サード野路選手の見事な中継プレーで阻止すると、一転して大きな歓声が上がった。野路選手が所属していた少年ソフトボール啓蒙アトムの野坂恭二監督(61)は「昔から運動神経が良くて器用な子。いいプレーだった」と目を細めた。
ピンチを抑えた後の八回には、松田主将がきっちりスクイズを決め再び2点差に。大野市で経営するガソリンスタンド3店舗を臨時休業し、従業員らと応援していた父耕明さん(47)は「よそ行きの野球をしなければいいんだ。しっかり仕事をしているじゃないか」と、息子を見守り続けた。
最後の打者を外野フライに打ち取ると、この日一番の大歓声がスタンドを覆った。応援団はネット前に詰め掛け、駆け寄ってきたナインを出迎えていた。
甲子園あこがれ
福井リトルシニアが観戦
先輩3人 ベンチ入り
竹沢投手ら3人の先輩に声援を送る中学硬式野球「福井リトルシニア」の選手たち
竹沢佳、野路、清水のベンチ入り3選手を出している中学硬式野球「福井リトルシニア」のメンバー16人がスタンドに駆け付け、先輩たちの活躍に大声援を送っていた。後輩たちは、夢の舞台へのあこがれを一層強くしていた。
主将の石黒竣也君=森田中2年=は「いいペースで試合が進んで、流れはこっちに来ている」と興奮気味。中山大督君=大東中2年=は竹沢投手の好投に「しっかり抑えていて、同じピッチャーとしてすごいと思う」と尊敬のまなざしを送っていた。
この日出番がなかった清水選手の弟克哉君=森田中3年=は「先輩が3人もいるので応援に力が入る。兄が活躍するところを見てみたい」と次戦に期待をつないでいた。
監督を務めるのは竹沢投手の父貞佳さん(40)。「100点をあげてもいい投球だった。初速と終速の差が少ないから、伸びるように感じるのかな」と分析。攻守に活躍した野路選手にも「彼らしいバッティングを見ることができた」と満足げの様子だった。